第12話 ゼリーな魔物
【ファンタジア防衛師団本部要塞 最高司令室】
ファンタジア封鎖戦と緒戦から3日後。私たちは最高司令室に呼ばれた。最高司令室ではクォット将軍が待っていた。
「連合軍はファンタジアシティ外延部にて軍を立て直しているらしい。兵力はおよそ130万。軍艦は20隻とコア・シップは2隻。戦車は――」
まだあのバカデカいコア・シップがあるのか。私が苦労して落としたヤツと同じ艦級のものが2隻も……。
でも、私たちの目的はコア・シップの破壊じゃなくて、ファンタジアシティの救援だ。つまりは、連合軍をファンタジア地方から追い出せればそれで任務完了になる。
「だが、1つ大きな障害がある」
私ははっとクォット将軍の方を見る。ヤバい、途中話を聞いていなかった。ちゃんと聞かなきゃ! ……で、今は何の話だろ?
「1隻のコア・シップに生物兵器が収納されている」
「生物兵器? あの生き物をベースとした軍用兵器ですか?」
連合軍は人間を素体に無数の生物兵器を作ってきた。意思と自我を失った3メートル近くもある巨体の怪物――ハンター=アルファやハンター=ベータは代表例だった。その素体とされるのはフィルドさんのクローン……。
「……またハンターですか?」
「いや、違う。今度はハンターのようなクローンがベースの生物兵器ではなく、魔物がベースだ」
「魔物が?」
「……ウォプルという魔物を知っているだろう?」
ウォプル? あの水色をしたゼリー状の魔物だよね。ウォプル2匹でウォズプルになってウォズプル2匹でウォガプルに進化する変な魔物(ぷるぷるしたキレイなゼリー状の魔物だから割と好きかも)。
「あのウォプルが何百、何千と集まって出来たのが“ウォゴプル”と呼ばれる生物兵器だ」
ふぅん。
「……で、強いんですか?」
正直、ウォプルはさほど強くない。それが何千匹集まったところで軍の攻撃なら一瞬で負けるだろう。大っきなゼリーに負けるもんか。
「強い。わたしの軍もかなりやられた」
「ええっ!?」
私はつい驚きの声を上げてしまう。ただ、声を上げたのは私1人だけだった。……という事はそのウォゴプルとやらが強いのは常識なのだろう。
「そのウォゴプルが邪魔なんですね」
「そうだ。ヤツのおかげで我が軍は敗北続きなのだ」
そのウォゴプルさえいなくなればいいのか。そうすれば、連合軍をファンタジアシティから追い出すことが出来そうなんだな。
「今、ウォゴプルはどこにいるんですか?」
「3日前にファンタジアシティ北部で一部隊を壊滅させた後、コア・シップに収納された」
へぇ、またコア・シップか…… って3日前の戦いで北部に派遣された部隊を壊滅させたのはウォゴプルだったのか。かなり手ごわい相手みたいだ。
「そのコア・シップはどこにありますか?」
「ファンタジアシティ北部のエリアD7。……何をする気だ?」
「……分かりますよね?」
私はサブマシンガンを腰に装備し、左右に開く灰色の扉を開け、部屋から出て行こうとする。私が1人で行けば、他のみんなの命を守れる。死者を出さないで済む。
「パトラー……」
「大丈夫です。必ず成功させて帰ってきますから!」
私は少しだけ笑みを浮かべ、部屋を後にする。ウォゴプルが邪魔ならソイツを倒せばいい。そうすれば、これ以上、みんなが死ぬ事も――。その時、私の頭に2年前の事が蘇る。
「…………ッ!」
2年前もそうだった。
「グッ……」
みんなを戦場で死なせたくなかったから、私は1人で敵の施設に乗り込んだ。自分なら出来ると思った。だけど、結果は失敗に終わった。そして、私は拷問された。
私は自分の部屋に向かって走る。熱くなった目頭を腕で押さえ、ひたすら走る。大丈夫っ。今度は出来る。出来るからっ……!
◆◇◆
【コア・シップ 最高司令室】
私は最高司令室から夜のファンタジアシティを眺めていた。夜のファンタジアシティは真っ暗だった。明かりがポツポツと見える程度しかない。
この3日間、俺は封鎖艦隊に回していた部隊を自軍に組み込むようにして軍隊を再編した。これで明日にも一斉攻撃が可能だ。
[ロフォール少将は南部を、ティトム少将は西部を、ガンダー少将は東部を攻撃セヨ! ゲザリ少将は北部の防衛を。兵力は各々20万ずつ。軍艦5隻とします]
「はっ!」
「了解」
「お任せを」
「イエッサー」
私は4人の少将に命令を下すと、今度は別の将官を見て言う。
[フト中将は100万の軍用兵器を率いて中央部へと侵攻してください。連中を本部要塞から引きずり出し、市内で戦うのです。私は連中が市内に出た隙を突いて、ウォゴプルを乗せたコア・シップで防衛師団の本部要塞にまで行きます。このウォゴプルを使えば、クォットも援軍も皆殺しに出来ると考えられます]
私は次の作戦で確実に連中を仕留めるつもりでいた。ウォゴプルは無敗の生物兵器。絶対に勝てるハズ。ファンタジアに来た時もクォット率いる政府軍を一気に駆逐できたのも、このウォゴプルのお陰だった。
体長1000メートルにも近いこの巨大生物兵器は長年の研究の末、完成したものだった。本来のウォプルはここまで大きくなる事はあり得ない。我々の遺伝子操作によって生まれた。
うっすらと水色をしたこの巨大ゼリーの怪物はまさしく最強の生物兵器。フィルドを素体にしたハンター系生物兵器よりずっと優秀だ。いずれは首都をも破壊し尽くす事にもなるだろう。
[それと、もう1つ。援軍としてやってきたパトラーのことですが、恐らく彼女は――]




