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番号違いの恋  作者: 蒼月想
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番外編・千紗の母視点: 娘の話は、よくわからない

「最近どう?元気にしてる?」


LINEにそう送って、スタンプで返ってくるまでに三時間。

千紗の返事はいつも、短くて淡白だ。


昔からそうだった。


小さいころは、ひとりで黙々と積み木を並べていたし、

思春期になると「別に」「ふつう」「とくになし」が会話のすべてになった。


だけど私は、そういう子だと、ちゃんと分かっているつもりだった。



去年の冬だったか、あの子がふと帰省してきた。

滅多にないことだったから、私は少し張り切って、カレーを作った。


けど食卓についても、千紗はスマホを見たり、テレビのニュースを眺めたり、なんだか心ここにあらず。


「ねえ、なんかあったの?」


そう聞いたら、ほんの少し間を置いて、


「となりの人が変でさ」


と、ぽつり。


何が“変”なのかは、まったく説明されなかったけど、

言葉の節々に、妙な温度があった。


心配というより、興味というか。

嫌な感じじゃなくて、むしろ……楽しそうだった。


それが、あの子が人の話をするときには珍しくて、私は思わず笑ってしまった。


「変わった人、好きだったじゃない」


そのとき、千紗は初めて、ちょっとだけ照れたような顔をした。



つい先日、たまたま上京のついでに千紗の部屋へ行った。


少し散らかっていたけれど、前よりずっと明るい雰囲気だった。


「誰か遊びに来たりしてるの?」


そう聞いたら、あの子は麦茶を差し出しながら、


「まあ……たまに」


とだけ言った。


それ以上は聞かなかった。


でも分かる。

なんとなく空気が違う。

いつか来る人のために、部屋を整えてる空気だった。


私はそっと麦茶を飲みながら、心の中で思った。


――ありがとうね。うちの子を、大事にしてくれて。


言葉にはしないけど、それが、母親としてのいちばんの願いだった。


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