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パワー労駄(リライト済)

――――

――


「ぐああああああああああああ!! 全身がアあぁぁぁぁ!!」


 絶叫と共に全身が仰け反る。起床時の安らかに起きる状況とは打って変わって、どちらかというと“朝起きたら足が攣っていた”という状況に近い。全身こむら返りという表現が妥当であろうか。既に攣ってしまったという状況である以上、どうしようもなく逃れられない激痛がその体を襲った。

 痛みから逃れようと転げまわる優也であったが、数分も経つとその痛みは次第に引いてきた。


 村人の一人が優也の目覚に気がついた。

「おっ。眼を覚ましただよ! さすがは神の使いの方だべ!」


 痛みから解放された優也は、木に手をかけると上体を起こし、なんとか立ち上がることが出来た。そして傍らに居る村人に聞いてみた。

「――くっ、はぁはぁ……、さ、最悪の寝覚めだ……。全身の筋肉が突っ張っている気がする……そ、それはそうとグラセーヌ様は……?」


「グラセーヌ様ならあそこにおるだよ……」


 そう言って指を指した先には、連続した痛みを無理にでも耐えきった影響であろうか、目の焦点は定まらず、口を開き、よだれを垂らし、木に横たわり憔悴したグラセーヌがいた。グルティーヌの話も聞いていたからか、少し可愛そうに思えた。


「……グラセーヌ様……?」

 優也はグラセーヌに近づき声をかけると、グラセーヌの身体を揺さぶった。こちらに気付いたのか、グラセーヌの目は焦点が定まり、我に返ったかのようであった。そして……


「ひ、ひいぃぃぃ!! 痛いのはムリ! 痛いのはイヤ!!」

 視界に優也の腕輪が入ると、仰け反るように距離をとろうとするグラセーヌ。その怯える巨体は背中の木をへし折らんとするほどであり、乾いた音を立て今にも折れそうである。


「ちょ、ちょっと待って下さい、落ち着いて話を聞いて下さい。ちゃんと説明する間が無かったから言いますけど、どうやらこの腕輪、俺が念じても、グラセーヌ様が極端に駄目な態度をとっても反応するようなんです。なので今回は諦めて、この状況をなんとかしましょう。それにほら、神様ともあろうお方が、人より劣るわけが無いじゃないですか。本気を出せばあっという間ですよ! 何があったか知りませんが、今は! 今だけは頑張りましょう!」

 説得する優也であった。

 さすがに度重なるお仕置きは堪えたようで、グラセーヌはいやいやながらも承諾した。いや、承諾せざるを得ないのであろう。


 グラセーヌは優也に説得され暫く沈黙すると俯いた。そして……


「し……。し、仕方が無いわね……! わたしの……、わたしのパワーをとくとみるが良いわ!!」


 颯爽と立ち上がり、掌をシャベルに向かってかざすと、シャベルはグラセーヌのやる気に応えたかよう地面から抜け、その手のひらめがけて飛んていき、グラセーヌの手へと収まった。

 両手で柄の部分を掴むとブツブツと何か言っているグラセーヌ。


 ――我の意思に応えよ、万物たるその金属、元素構成、我に仕え、我の望む最適の形へ、そしてその願望は形となり、現状から変化し、そして我を楽させたまえ!


 シャベルが突然発光し一回りも二回りも大きく、そして形状が変わっていった。


「で、でかい……」


 思わずその場にいた一同はその巨大な物体を見るなり唾を飲んだ。

 変わってゆく形状と色素、それは重機のバケットのようであり、黄色と黒のストライプに装飾されたその鎧は、グラセーヌの腕、身体、脚を覆うように装着され、それはまるで――


 ――そう、どこかで見たパワードスーツのようであった。


 優也との身長差は2倍から3倍ほどに。無骨な重機にすっぽりと覆われたグラセーヌは、窓のないコックピットに収まっており、頭上の屋根にはスポットライトが4灯、両手からは2本の巨大なアームがあり、先端は巨大なバケットとドリル、太ももから下そして膝下から先までは黒と黄色のストライプの金属と、銀色に光るシリンダーとスプリング、それらが脚を覆っていた。


「うおぉぉぉぉ!! すげえぇぇ!!」


「なんじゃぁ、あの鎧は!!」

 見た事も無いその物体に村人と優也は歓声を上げた。


 グラセーヌはこちらに視線をやるなり、にやりと笑うと気合いの入った声を上げた。


「みてなさいよ! いくわよ、うおりゃああぁぁぁぁぁぁ!!」


――――

――

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