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髪とイカ(リライト済)

――――

――


「ふぅ……やれやれ……。とりあえずこれでデルベ村だっけ……そっちの方は安泰だな……」


 優也たちは、グラセーヌのアイディアもあって、なんとかデルベ村に食料を送信することに成功したのである。


「さて、次に知者となったハウゼンと、この村……だったね……」


「はっ! 我々はボス・グラセーヌの配下に下りました! 何なりとご命令を優也様!! ボスの婿と成られるお方の言葉は絶対であります!!」


「ちょっとまて、ちょっと待ってくれ……何がどうなって婿になるんだか分からないんだけど、グラセーヌは一体何をしでかしたの?」


「はっ、申し上げます! それはですね優也様、グラセーヌ様の圧倒的パワー、そして、そのパワーから生み出される不死身とも思える耐久力と破壊力に屈したのと同時に、我を精神支……」


 ――ドッ

 ハウゼンはグラセーヌの手刀により気絶した。


「ふぅ……、危なかったわ……」


 (こいつ……、本当に豊穣神かよ……)


「と、とりあえずハウゼンは寝ているから、次にシルクの髪の話になるんだが、どうしてこうも生えてこれたんだろうか……ということについてだが、心当たりはあるかね。グラセーヌくん」


「最初に降り立ったとき、わたしの汗を被ったハーゲンに発生したしたわね……毛が……、それと植物もね……」


「そうあの時、つまり必死になって動いた、働いたその汗が糧となり触れた植物または触れた者の毛母細胞が活性化し毛が生えた……と言うわけだ。しかし!」


「今、こうしてダラダラと汗を垂れ流し続けているグラセーヌの汗に触れても、何も発生などしない!」


 建物が倒壊し、村は先ほどの争いでほぼ壊滅していた。風を凌げるわけでもなく、材木を燃やし村のモンスター達と皆で暖をとって休憩しているところであった。グラセーヌには汗を出して貰うため特製サウナスーツを着て貰っている。


「つまり働け……と、いうことだ……」


「えええええぇ!! わたし働いたよ! モンスター服従させたよ!」


「いや……服従て……、って、まぁ落ち着いて欲しい……問題はそこではない……。『食事をして寝たから生えた』という説明だけでは成り立たないということだ。問題は何を摂取したか、ということだ」


「ふむふむ、それで?」


「シルクは俺の作った天ぷらを食べた。が――、その食材はグラセーヌも食っている。にもかかわらず髪に変化は無い、それはもちろん俺もだが。となると、残るのはマヨネーズの分離した油分……、これを摂取したから生えたと踏むのが道理だろう……。でだ、この前グラセーヌとリンクしたときに出したマヨネーズを召喚したにも関わらず、グラセーヌの腹は極端に減ってなかった。つまり……」


「つまり…………」(ゴクリ……)


「そう……、リンクは切れている。そしてあの日、リンクしたグラセーヌのほぼ全ての魔力を出し尽くしたあと、俺の体内にその全てが帰って行ったわけだ。と、なると考えられるのは俺の体内にグラセーヌの魔力と、グラセーヌ自身が長期にわたり怠惰な生活をしていた際に蓄えられた『謎の発毛成分』が備わっている……、と言うことにならんか?」


「そ、それはそうかも知れないけど……」


「つまりこれらを纏めると、俺が作り出した調味料を使うと、発毛するという図式が成り立つことになる!! これで財を稼いでウハウハ調味料生活……という事も可能と言うことだ……と、言うわけで、グラセーヌくん、これが落ち着いたら街に行こうと思うんだ……」


「まぁ、街に行けば魔術指導も受けられるみたいだし、よくある冒険者組合ってところで、職業指南とかも受けてお金も稼がなきゃだし、ゆくゆくは行かなきゃならんのよね……。それに毎夜毎夜うちのジジイが夢に出てきて、街へ行って働け働けって、うっざ……」


 ――ピシャーン!!

 快晴であるハズなのに、突然グラセーヌに雷が降り注いだ。


「うわぁぁぁあ!! ビックリしたぁ……」


「ぶっ……ごほッ……、お父様が……ゆ……夢に出てくるのよ……」


「どこかに暴言監視システムでもついてるのかな……」


「あっ、でも待って! 街って事は、あんなものやこんなものも食べられるって事? 『スルメ』とか『のしイカ』とか『ゲソ』とか、『イカ焼き』や『イカめし』もあるんでしょ!?」


「どんだけ『イカ』にこだわってるんだよ……。たしかに俺の世界に居たときにはあったよ、でも、この惨状をみるからに、『イカ』は、辛うじているかも知れないけど『イカめし』とかは出てこなさそうな世界だと思うよ……」


「甘いわね優也、『イカ』はマヨネーズとの相性が抜群なのよ。神の食べ物なのよ。『イカ料理』がこの世界に無いなんて事ありえると思う? わたしには考えられないわ」


「そもそも、『イカ』を得るには海があるところに行かないといけないだろ、ここからどれぐらいあると思ってるんだよ……」


「『イカ』は居ますよ」(にゅっ)

 ハウゼンは優也の横から横から顔を出した。


「うわぁ、ビックリしたァ! いきなり復活するなよハウゼン」


「ちょっと記憶が飛びましたが、丁度今目覚めたばかりでございます、優也様」


「にしても、なんで山にそんなのが居るんだよ、普通は海水だろ、淡水域に居るわけが……って、まてよ、これは調べてみる必要があるのかもしれないな……」


「えっ、『イカ』食べれるの!? 『スルメ』食べれるの?!」

 目をキラキラさせながら優也の方を見つめているグラセーヌは少し興奮した様子で問いかけた。


「いや、まだ確証は無いけど、それ以上のものが手に入りそうだし、とりあえず復興がある程度軌道に乗ったら行ってみることにするか……、それまでは、グラセーヌも頑張って労働だからな!」


「えー……、もう動きたく……」


 ――ブウゥゥン……


「あっ、ちょ、ちょっとまだ、愚痴を言ってる途中なんですけど!!」


 パチパチも燃えさかる焚き火のそばで、神々しく光る丸い球体がそこにはあったそうな。


――――

――

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