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神と髪(リライト済)

――――

――


「はああああああああああああああ!! もう我慢できない、こんな食事はうんざりよ!! 魔物をぶっ殺してぶっ殺して、この村をなんとかする!! いいわね優也!!」

 グラセーヌはテーブルをバンバン叩きながら激高していた。テーブルにあったボウルはあまりの勢いで落ちそうになっている。

「え、えぇ……。とはいえ、村の自警団ですら無理そうなのに、うちら2人で何が出来るんですかい……」


「一応優也は魔法が使えるじゃないの。それにわたしが居ればほぼ死なないわ。それとこの前の一件で幾つか解呪されたみたいだし、使えるスキルだっているつかあるのよ!」


「どんなスキルか分からんし、碌でもないスキルじゃないと良いんだけど……」


「まぁまぁ任せなさいって、それは現地に行ってのお楽しみって事で。でも、もう一人くらい魔法使えるのが欲しいわね……いざって時の補助要因って事で。なにせ今の優也の魔法ってそのままだと燃費効率悪すぎるし、極端にわたしの腹が減るしで、まともに使えたもんじゃないのよ。それとそもそもが基本5元素と光と闇の2元素の枠組みからも完全に外れているし、私自身も優也が何が使えるかも分からないのよ。だからいろいろと調べながら、効率的に魔法を練習していかないとこれから先、わたしもあなたも共倒れって事になるのよ。そんな訳だから保険としてのサポート要員が必要って訳。たぶんやれなくは無いんだけど、念のためって事ね」


「なるほど、それならハーゲンの娘さんのシルクくらいだろうな。他にも居なくは無いんだが、他の魔法使いは街への護衛要因として同行していて出払っているからな。それと一応炎系魔法が使えるみたいなんだが……、ただ……」


「ただ、どうしたんです?」


「ただ……、例の病気のせいであまり人前に出たがらないんだ。我々としては、髪があろうが無かろうが、そんなの気にもしていないのにな……、まぁ年頃の女の子だし、無理も無いといえばそれまでだが……。あとはハーゲンの了承を得られるかどうかにかかってくるって訳だが……」


――バァン!


「話は聞かせて貰った! うちの娘なら良いぜ、あんたらには借りがある。それに危険なところに向かうとはいえ、神のそばに居た方がある意味安全だろう。それと優也にも助けられたし、ここいらで恩返ししないとな!」


 なんだか口調の変わったハーゲンが勢いよく部屋に入ってきた。髪が生えて自身がついたからであろうか……。その傍らには、ハーゲンにすがり付き、袖をぎゅっと握っている小柄の女の子が居た。黒いローブでフードを深く被り、顔はあまり見えない。左手には身の丈ほどもある木で出来た杖を持ち、いかにも魔法が使えそうと言わんばかりであった。


「とはいえ良いんですか? 娘さんですよ。我が子ですよ? 見た感じサポートできるとも思えませんが……」


「大丈夫大丈夫。見た目より丈夫だし火力だけはある。いざとなったら形見の転移石を持たせておるから、その辺は安心してほしい。それとこうでもしないと、いつまで経っても独り立ちできないからな……。ほら『シルク』、二人に挨拶しなさい」


「は、はじめまして、シルクといいます……。よ、よろしくおねがいします……」


「よろしくシルク、俺は優也。こっちの太ましいのはグラセーヌ。一応神様だ」


「って、ちょっと誰が一応太ましいのよ!! まぁ確かに少し太ましいけどただの魔力太りなんですからね!!」


「くすくす……。優也さんと、神様ですね。仲がいいんですね……。私なんて、髪がないのに神と一緒に行けるなんて、場違いにも程がありますよね……」


「大丈夫よ!! 髪なんて本気を出せば一瞬でなんとかしてあげるから大船に乗ったつもりでいなさい!!」


「ええっ?! 髪なんて一瞬で溶かしてあげる……って…………うっ……うっ……」


「くああぁぁぁぁ!! そんなこと言ってないわよ!!! わたしが髪の毛を生やしてあげるって言ってるのよ!!! それにここではグラセーヌでいいわよ面倒くさい!!」

 グラセーヌは掴んだテーブルさっきにも増して揺らしており、テーブルは今にもその役目を終えそうなまでに軋んでいる。


「か み を は や す……?」

 良く意味を分かっていないのか、首をかしげているシルクであった。


「すまんな、シルクは髪に憧れるあまり、ちょっと卑下になりすぎてしまって『かみ』という言葉に反応しすぎるんだ……。小さい頃から長い綺麗な髪に憧れとってな……。かといって俺の稼ぎじゃカツラも買ってやれん……、場合によっては俺の毛を毟ってくれてもいい。たのむ、なんとかしてシルクの髪を生やしてくれ。お願いだ!!」


「わたしも乗りかかった船よ、もうこうなったら神の名において意地でも生やすわよ!! 良いわね、優也!!」


「『良いわね』って……主にグラセーヌがやるんですが……。ていうか眉間に指を押しつけないでくださいよ」


 こうしてよく分からないメンバーが結成されたのである。

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