酒場での一件3
「そもそも女騎士などという役職は存在しない!!」
木製のジョッキを同じく木でできた机に叩きつける。
中身が溢れそうになるが気にはしない。
「騎士は男がなるものなんだ!女はなれないんだよ!!だから、私は自称女騎士なの!!!だから、真面目なんかじゃない!お酒だって飲む!!」
何がだからなのかさっぱりわからない!そんなものを考えられる思考力はすでにアルコールによって消し去られていた。
今の私は勢いだけで喋っているようなものだ。
「それはいくないよ!差別はいくない!!シルヴィアちゃんは悪くない!!悪いのは時代だ!!」
伊吹は同意しつつ私のジョッキに手早くお酒を補充する。
「わかってくれるのか伊吹!」
私も伊吹にならい彼女の空いたジョッキに酒をなみなみと注ぐ。
「もちろんだよ!女だからってお酒が嫌いだとか弱いと思われるのは差別だ!偏見だ!!女がお酒好きで何が悪い!!!」
「その通りだ!なにも悪くない!!私は誰になんと言われようと断固として騎士であることをやめない!!」
「私もお酒が大好きだと言い続ける!飲み続ける!!」
なんだか話が噛み合っていない気がするが知ったことではない!
久しぶりに声を張り上げて、思いの丈を吐き出して気分がいい!!
「私は絶対に女騎士になるんだ!憧れた夢を叶えるんだ!!」
私はグラスを高々と掲げ意気揚々と宣言する。
「私も絶対、この世にあるすべてのお酒を飲むんだ!子供の頃からの夢なんだ!!」
伊吹も私にならったのかグラスを掲げる。
「伊吹。私は君の夢を応援するぞ!他人から見ればどうでもいい夢に全力の君は尊敬できる!!」
「私もだよシルヴィアちゃん!シルヴィアちゃんの夢応援する!!否定なんかしない!!!」
私たちは今日初めて会ったばかりとは思えない阿吽の呼吸でグラスを合わせお酒を飲み。
こんなに楽しくこんなにも他人から優しくされた夜は初めてだ。
お酒が入っているせいかなんだか目頭が熱くなるのを感じる。
「泣かないでシルヴィアちゃん。お酒が薄くなっちゃう!私は何があってもシルヴィアちゃんの味方だから!だって飲み仲間だもん!!」
「ありがどう!仲間って言ってくれたのは伊吹だけだ!!私も伊吹のこと仲間だと思ってる!!」
私は感極まって伊吹の身体のどこにあれだけの量の酒が入るかわからない華奢な肢体を抱きしめた。
「よし!!お互いに初めての仲間になれたことを祝して今夜は飲むぞーー!!!」