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仕事はじめ

 朝日が昇る。

 文崇は堅い板張りの床で疲れたように目を覚ます。

 タクシーに乗り込み、朝飯を食べに酒場に向かう。

 酒場では銅貨1枚でパンと牛乳が出た。

 ライムギパンを口に頬張り、牛乳で流す。

 酒場の女主人が笑いながら声を掛けて来る。

 「あんた、仕事はどうするんだい?」

 「今日からタクシーをやろうかと思って」

 「タクシー?」

 「人を乗せて、彼方此方に向かう仕事です」

 「あぁ、馬車かい。そりゃいい。安ければ乗るよ」

 「安いかどうか。快適にお送りする事はできますよ」

 「馬車に快適も何も・・・」

 女主人は少し困惑したような表情だった。

 文崇はそれがどんな意味なのか解らぬまま、村の中央にある広場へと向かう。

 タクシーは珍しいせいか、色々な人々が寄って来る。

 「これからタクシーの試乗をしていただきます」

 文崇はとりあえず、タクシーが理解して貰おうと乗って貰う事にした。

 興味津々の村人たちはタクシーの後部座席に乗り込み、広場を一周する。

 「凄いな。荷馬車みたいな揺れないぞ」

 「なんだ、この速さは、馬なんて目じゃない」

 多くの村人は荷馬車程度しか乗った事が無い。

 荷馬車の車輪は木製、サスペンションなど無くて、路面の凹凸はまともに響く。だから、速度も上げられない。それからすれば、タクシーは圧倒的に快適で、速かった。

 その為、試乗した村人からは驚きと高い評価が寄せられた。

 願わくは荷物があまり乗らないぐらいであった。そこはタクシーが人を運ぶ道具だとして、諦めて貰うしか無かった。


 試乗会は思ったよりも好評で、多くの村人が使いたいと申し出てくれた。

 文崇はこれでかなり自信が持てた。

 最初にお客になってくれたのは齢64歳のグレタ婆さんだ。

 この世界では医学が発達してないので、平均寿命が50歳ぐらいらしい。なので、64歳のグレタ婆さんは村でも指折りの高齢者である。

 腰が曲がっているが、まだ、元気なグレタ婆さんは隣町に住む息子夫婦の家に行きたいらしい。

 隣町とは言うが、村からは15キロ程、離れており、年寄には長い道程である。

 「シートベルトをしますね」

 文崇は後部座席に乗り込んだグレタ婆さんにシートベルトを着用させる。

 グレタ婆さんは少し緊張した面持ちだった。

 運転席に乗り込んだ文崇はグレタ婆さんから聞いた町の名をナビに言う。

 すると手書きの地図がナビ画面に表示される。

 「これは・・・」

 文崇は少し驚く。するとナビが声を発した。

 「私の記憶を映像にしています。多分、こんな感じです」

 正確さを欠くナビだが、無いより当然、マシだった。

 文崇は早速、アクセルを踏み込んだ。

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