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九人の戦鬼と万の敵  作者: 鷺之森雅雪
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旅の仲間

クラウドキラー盗賊団。

ギンレイ山脈の麓を活動域とする盗賊団で悪徳商人や傲慢な貴族を主にその標的としていた。

重すぎる荷物を軽くしてあげるのがもともとの仕事だとジョシュは語る。

しかし、それは先代までの話で代代わりした今では強盗や恐喝、人身売買や薬物の取り引きまで儲かることならなんでもするような集団にかわってしまった。

盗賊ではあるが義侠心のあるジョシュはそんなかわっていくクラウドキラーが嫌になり、たまたまた誘拐されていた王都の商家の娘リリィを救出し、盗賊団を抜けたのだという。

しかし、途中みつかってしまい殺されそうになったところを僕たちが助けたのである。


「ありがとう、本当に助かったよ」

ジョシュは言う。

彼はリリィをこのまま王都におくり届けるのだという。

なら目的地は同じだ。

この先、街道を進むだけなのだが先程の盗賊団が追いかけて来るかもしれない。

「僕たちも王都にいく予定なのです。なら一緒にいきませんか?」

僕は言う。

ちらりとフランを見る。

「ボクはアルリスがいいならそれでいいよ」

フランは答える。


「それは願ってもない。ぜひ一緒にいかせてほしい」

ジョシュは言う。

僕たちはジョシュとともにリリィを王都まで送りとどけることになった。

今はかなり粗末な服をきているがもともとは豪商の一人娘だとジョシュはリリィのことを説明した。

「ありがとうございます騎士様。王都までよろしくお願いします」

リリィは黒髪の頭をペコリと下げる。



街道沿いの小屋にもどり、僕たちはそこで一晩すごす。初めての戦いで思ったより疲れたようだ。

僕はすぐに眠りにおちた。

どうやらあの盗賊団の襲来はなかったようだ。

起きるとフランが僕に抱きつき、すやすやと眠っていた。

干した米を水で戻して煮たものと乾燥肉という朝食をとり、僕たちは宿場町であるゲロニカを目指す。

オリオンにジョシュを乗せて、僕たちは徒歩で行く。

騎馬で進むよりもさらに日程がのびそうだ。

まあ、仕方ないだろう。これも人助けだ。

朝から歩き、ところどころで休憩をはさみながら夕刻前にはゲロニカの街につくことができた。


宿屋選びはジョシュがかってでてくれた。

彼は僕なんかよりも世間的な知恵にたけていて格安の宿屋をみつけてきてくれた。

しかも小さいがお風呂もついているのだという。

これはありがたい。

部屋わりは僕とフランが同部屋、ジョシュとリリィがそれぞれ個室で休むことになった。全員が個室で休むことができたが、どうしてかフランがいやがったのだ。もう、しかたなかいな。一人でゆっくりとベッドで休みたかったのに。

フランがわがままいったのでベッドが二つの大きめの部屋をとることになった。

「どうせボクのお金だからいいじゃない」

僕が別々の部屋がいいと言うとプリプリと怒りながらフランは言う。たしかに今の僕は無一文なので旅の費用はフラン頼りだ。

ジョシュもリリィを助け出すので精一杯でそれほど手持ちは多くないという。

ここは財務大臣のフランのいうことを聞くしかないのだ。

「旦那もたいへんですな」

ジョシュが言う。


一日の旅ではあるが僕たちはけっこう仲良くなった。

ジョシュは僕のことを旦那と呼ぶようになっていた。

リリィを王都に送りとどけたあとは行くあてもないので行動をともにしたいのだという。

世間的な知恵にたけ、戦闘もこなせるジョシュが仲間になればこれは心強い。

このことにフランも異論はなさそうだ。

「ボクは天才だけど金勘定が苦手なんだよね」

とフランは言い、ジョシュが仲間になることをこころよく受け入れてくれた。



小さいが人ひとりが入るには十分なお風呂につかり、僕は旅の疲れをとる。

近くに温泉がわいていてそのお湯をはこんできているのだ宿屋の女将がいっていた。

女将はとても料理上手で久しぶりに温かい料理にありつくことができた。


お風呂を出て、さっぱりした僕はベッドで休むことにした。すでにフランがもうひとつのベッドでいびきをかきながらねむっている。

また素っ裸でねているや。

だらしないな。

僕はシーツをフランにかけてから別ののベッドにはいり横になる。

すぐに眠気がやってきて、ねむってしまった。



せっかくすやすやと気持ちよく眠っていたのに首もとになにか冷たいものを感じる。

うっすらと目をあけると何者かが僕にまたがり、短刀を首筋にあてている。

こんな状態になるまで気がつかないなんて、油断しすぎた。

「質問に答えてほしい。君はお嬢様を誘拐したのかい。それとも助け出してくれたのかい」

その声は高いものだ。

おそらく女性のものと思われる。

「嘘は嫌いだよ。私が嘘だと思ったらこの村雨が黙っちゃいないよ」

とその人物は言った。


「僕たちリリィを助けて王都に向かう途中なんだ」

僕は言う。


その人物は顔を近づけ、僕の瞳をみつめる。

丸顔の可愛らしい雰囲気の少女であった。

「どうやら嘘はついていないようだね。お嬢様の命の恩人にすまないね。私は忍びのアヤメ。リリィお嬢様の救出を依頼されたものなんだ」

その少女は自分を忍びだと名乗った。

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