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九人の戦鬼と万の敵  作者: 鷺之森雅雪
6/8

逃亡する盗賊

 ツルガの村をでて、南の街道にはいる。

 フランの話では王都エルドバルには騎馬で三日ほどの日程だという。

 中間地点には小さな宿場街があり、それ以外にも街道の脇には旅人が休めるように街路樹や簡易的な小屋がいくつかおかれている。

 しかし、その街道にも時々ではあるが盗賊や魔物があらわれるので油断は禁物だということであった。


 まず一日目はそれらの盗賊やおいはぎ、怪物たちに遭遇しなくてすんだ。

 夜になり、僕たちは街道沿いの小屋でやすむことにした。

 干した米を水でもどし、それに塩をたしたものを夕食とした。それと塩漬けした野菜。

 さすがにお腹いっぱいとはならなかったが体は温まった。

 フランがまたそのお粥を食べさせようとしたが丁重にことわった。

 もう一人でものを食べられるからね。

 いつまでも甘えてられない。

 なぜだか、僕が断るとフランはぷーと頬をふくまませた。

 彼女はなにに怒っているのだろうか?


 火が完全にくれたので僕たちはその小屋で眠ることにした。

 テーブルにランタンを置き、小さな灯火をつけておく。

 フランが壁に手のひらサイズの鈴をつける。

 これはフラン博士の特別製で侵入者があれば鳴らして教えてくれるというのだ。なかなか便利なしろものだ。

 僕たちはそれぞれ毛布を体にまきつけて休む。

 獅子の月(四月)の半ばとはいえ、まだまだ冷え込む。毛布は必需品だ。

 僕は床に寝転がる。

 騎馬の旅でずっと背後にフランをのせて気をつかったのだろう、僕はすぐに眠りについた。



 気持ちよく眠っていたのだが、外からガタガタというかなり大きな音がしたので僕は目をさます。

 目をさますとなぜだか、フランが僕に抱きついてねむっていた。

 あれっ、別々に寝たはずななのに。

 それにけっこうな力で僕にだきついてすやすやと寝息をたてている。

 外からの音はだんだんとこちらに近づいてくる。

 どうやらその音に人の声もまざっている。

 オリオンが外でぶるるっと鳴いている。

 彼なりに異変をしらせようとしてくれているようだ。

 そして視界に異変がおこる。

 左目に若干の熱がこもる。

 驚いたことに視界の左上にこの小屋周辺の地図が浮かぶ。


 特技スキルに地図職人が追加されました。

 これより自動マッピングが可能となります。

 視界に文字が浮かび、消えていく。

 なるほど、この魔力のやどったウロボロスの瞳にはこのような能力があるのか。

 本来新しくスキルを覚えたら神官や高位の魔導師に鑑定してもらい、その身に定着させるのが一般的なのだが、この魔眼はそれを自動でやってくれるのか。

 これはものすごく便利なしろものだぞ。


 そうこうしているうちにマップに白い点と赤い点が浮かぶ。

 白い点はふたつ、赤い点は十数個ある。

 その点たちはどんどんとこちらにちかづく。

 勘だけどこれらは生体反応だ。

 僕はフランの肩をゆさぶって起こす。


「ふへえ、もうステーキたべきれないよ……」

 フランは寝言をいいながら、口からよだれをたらしている。


「起きてフラン。誰かがこっちにやってくるよ」

 僕はフランに言う。


「本当だね。こっちにやってくるよ」

 フランは言う。

 赤い点は殺意の象徴で白い点は敵対反応ではないとフランは説明した。

 どうやら彼女の右目にも同じものが見えているようだ。


 僕たちは外の様子をうかがうためにそっと小屋をでる。

 おっとその前にランタンの火を消してておかないと。


 木陰に隠れていると二人の人間が街道に入ってきた。

 一人は革鎧を着た無精髭の男でもう一人は粗末な服を着た少女であった。

 そのすぐ後にいかにも人相の悪い男たちが街道の左右から侵入する。

 あっという間にその二人は凶悪な人相をした男たっちにかこまれた。

 その見るからに凶悪で粗暴の悪そうな男たちはそれぞれ剣や槍、斧なので武装している。あきらかに山賊か盗賊だ。


「ジョシュ、その女を返せ。そいつは大事な売り物なんだ。なに返せば楽にころしてやるぜ」

 げへへと男たちの一人でのスキンヘッドが言う。

「くそ、だれが貴様らなどにやられるか」

 ジョシュと呼ばれた男は短剣を両手に持ち、そういった。



 盗賊ジョシュLV18

 戦闘力156

 魔力55

 素早さ246

 幸運113

 特技スキル両手剣、弓術、素早さ上昇、回避率上昇、指弾となっていた。


「へへっどっちを助ける?」

 どうしてかフランは楽しげに舌なめずりして僕に訊く。

 あきらかにジョシュと呼ばれた男とかわいらしい少女は追われている。

 僕の推測だが、あの少女は奴隷として売られる寸前にあのジョシュという男と逃げ出したのだろう。

 それを周囲を取り囲む男たちが追いかけてきたのだろう。

 

 人身売買なんて許せない。

 人間をもののように売り買いするなんてやっていいはずがない。


「もちろん、あの女の子たちのほうさ」

 僕はフランに答える。

 その言葉を聞いたフランはニヤリと微笑んだ。


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