第4話
ネネーシアの母、アリステアはどうやら半分エルフだったらしい。
つまり、ネネーシアの祖母、アリステアの母がエルフということだ。
翠の山脈の森にエルフの国が在るらしい。祖母であるエルフ、トゥトゥーリナはエルフの国を出て旅をしている途中、祖父に出会い、恋に落ちてアリステアが生まれたそうだ。実は、この国の公爵家の嫡男だった祖父は、アリステアが辺境伯ジークリードに嫁いだ後、弟に公爵家を継がせ、トゥトゥーリナと一緒にエルフの国へ引っ越していった。トゥトゥーリナがいれば、他に何もいらないそうだ。
そういうわけで、ネネーシアは4分の1がエルフらしい。そのため、割と魔力はたくさん有る。
水霊さんのおかげで加護が『ネットワーク』というスキルであることが判明したネネーシアは、もちろん、色々と試したくなっていた。
ええと、温泉水晶に魔力で触れたら、水の眷属の輪、っていうのに繋がったのよね。
あ、水の眷属って言ってたから、水以外にも○○の眷属の輪があるんじゃないかな。
水があるんだから、火とか?ええと、風とか?
なんだっけ?あれあれ!五つあるやつ、アニメとかで見た!
火、水、土?木?あれ?なんだっけ…?風はないのかな?あるよね?
うーん…勉強してないことを思い出そうとしても無理だよね。
ということで、自分に理論の裏付けがないことを自覚したネネーシアは、とりあえずトライアンドエラーの方針でやってみることにした。
つまり、片っ端から魔道具っぽいものや、身の回りの自然っぽいものに魔力を伸ばして触れてみることにしたのである。
結果。。。
勝率4割程度。微妙に負け越し。。。。いや、勝ち負けじゃないし。
なんとなく掴めたこととしては、自然の力を込めた魔道具だと、大抵○○の眷属の輪っていうのに繋がる、自然そのものに触れた時はたくさん魔力をこめて伸ばせば繋がる、人の手による人工物になるとほぼ繋がらない、というような感じだった。
そして、スキル『ネットワーク』を使って、ネネーシアがやったことは……特になかった。
いや、挨拶はした。人として最低限の礼儀ですから。
魔力を伸ばして、触れてみて、繋がったら、挨拶して自己紹介。
そんなことを繰り返しているうちに、知り合いや友達になってくれる人?(モノ?精霊?なんだろう?)やら、世話を焼いてくれる人?やら、色々教えてくれる人?やら、自称親代わり?、自称姉貴分、自称お兄様、みたいな人?がどんどん増えていった。
そうやって、ネネーシアの幼児時代はわりかし楽しく平和に過ぎていった。
そうそう、ネネーシアの夢の車椅子計画も始動していた。
ネネーシアは、自分で魔法を使って作ろうと思い描いていたのだが、その前に燃え上がったのは、父、ジークリードだった。
ハーフエルフの母アリステアを娶れるくらい、膨大な魔力、豊かな魔導知識、潤沢な資金と三拍子揃ったイケメンパパが燃え始めたら、消火することは困難だった。
「うちの可愛い、愛らしい、ネネのために、最高の車椅子を作る!!!!」
このイケメン?イクメン?パパの暴走は、ネネーシアの乳母の
「ネネお嬢様の足が…動かないようです…(泣)」
という言葉を聞いた瞬間から始まっている。
ネネーシア専用夢の車椅子「オーバーザレインボウ」第5号“改”。
略して「レイ号」。試作を含めると、ネネーシアが生まれてからの5年間で20台を越えた。
性能はもちろん、優美さ、乗り心地、機能美も追求した芸術的な逸品(しかも魔道具仕様)に仕上がってきている。
そんな父の暑苦しい愛を、ネネーシアはちゃんと受け止めていた。
マイルーム用、お食事用、お散歩用、お出掛け用などに使い分けているのはもちろん、メイド達と相談しながらドレスとのコーディネートを考えてみたり、パーツを組み替えて着せ替え車椅子にしてみたり。アイディアや要望をきちんと伝えて、パパと一緒に理想の車椅子を日々研究している。
5歳のネネーシアは、辺境伯に溺愛される「車椅子令嬢」として知られるようになっていた。
ネネーシアが、スキル「ネットワーク」を使って情報を得たり、集めたり、広げたり、繋げたりして、『占い姫』と呼ばれるようになるのは、もう少し後のこと。
夢の車椅子、空とか飛んじゃうかも?
むしろ、車輪とかいらないかも?