表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

第3話

 初めのうち、ネネーシアは自分のスキルに気づいていなかった。

 いわゆる“転生チート”は、言葉がわかることだと思っていたからである。赤ん坊の時代のネネーシアは、周りの大人の話をひたすら聞いて情報収集につとめていた。言葉の端々から、魔法が存在する世界であることを窺い知り、ワクワクしながら、自分にも魔法が使えたらいいなぁと思いながら過ごしていた。


 考えないようにしていたけれど、本当は気づいていた。


「足は無理だったよ」


 神様らしき人がそう言っていたのを覚えている。


 赤ん坊は歩けない、それはわかってる。

 でも、足が動かないのは、赤ん坊だからじゃない。


 転生させてもらえたとしても、やっぱりそれはショックだった。

 歩けない生活の覚悟はなかなか難しい。

 だから、ワクワクする魔法のことをたくさん考えた。あんなことがしたい、こんなことができるかな、前世で見た映画やアニメの世界、小説や童話の魔法を思い出しながら、たくさん考えた。

 何しろ、赤ん坊はそんなにやることがない。ミルクを飲んで、寝て遊ぶ。考える時間はいっぱいあった。


 もともと寧々だった頃も、暗いことや悲しいことを長く思い悩むのは苦手だった。

 出口のない思いをぐるぐる考えたり、愚痴を言ったりするのが好きじゃない。

 だから、乳母がネネーシアの膝から下が動かないことに気づいた頃、ネネーシアの頭の中は、魔法を使うこと〜魔法の車椅子ができないかなぁ、いやいやむしろ、空を飛んでみたりして?、あ、瞬間移動とか?〜でいっぱいだった。

 楽しいことは、いつまでも考えていられるし、自分の中の魔力っぽいものもなんとなく感じられるようになっていた。


 

 そんなネネーシアが自分のスキルに気づいたのは、お風呂の時だった。


 ネネーシアが生まれたのは、肌寒い季節だったので、お風呂は毎日ではなかったし、風邪をひいてはいけないと、赤ん坊を長湯させることもなかった。

 ネネーシアも、お風呂の時に魔法を使ってみようと思うこともなかった。


 だが、春が近づいたその日は、珍しくポカポカ陽気でいつもよりお風呂の時間が長かった。

 ネネーシアのお風呂は、父ジークリードが手ずから作成した魔道具、ちょうどいい温度になるように調整した美しい温泉水晶を浅めの湯船に浸してそこに浸かる、なんとも贅沢なものだった。

 温泉水晶も、万が一ネネーシアが触れて怪我をしないよう、ツルツルに研磨されていた。

 今までゆっくりとお風呂を楽しむほどの時間、浸かれていなかったネネーシアは、その美しい温泉水晶を見て自然と手を伸ばした。…つもりで、つい、魔力も伸ばしていた。


 すると


 温泉水晶にネネーシアの魔力が伸びていき、くっついたかと思うと、まるでチャンネルが切り替わったかのように賑やかな声が聞こえてきたのである。


[もう少し温泉成分出してみるか?]

[赤ちゃんには、刺激的じゃ無いかしら?]

[低刺激、大事よね〜]

[そんな言葉、どっから覚えてきた]

[海の森のおばば様よ。淡水ばかりじゃなくて、たまには海水にも行かなきゃよ]

[アリステアの伴侶の魔力は質がいいから、サービスしないとね]

[そうでなくては、アリステアとは結ばれん]

[そうよねぇ〜  …あら? アリステアの娘が繋がっているわよ?]

[ええ〜〜! そんなことってある?]

[流石に、赤ちゃんだから、声は聞こえてないと思うけど…?]


[あ…えーと、ネネーシアと言います。

 よろしくお願いします]


 元日本人の礼儀正しさが発揮されて、自己紹介をイメージしたら伝わってしまった。


[あ、こちらこそよろしく〜

 私は、森の奥の泉の精よ]

[我は、火の山の麓の温泉に住む、水霊]

[私は、岬の入江の人魚ルーファーファよ… って、普通に自己紹介しちゃったけど、なんで人間が、しかも赤ちゃんがここに繋がっているのよ〜〜〜!]


[えーと…… なんででしょう?

 私にも分からないんです。

 あったかいお湯の出る綺麗な石に触ろうとしただけなんですけど…]


[ああ、それは、我がアリステアの伴侶に力を貸した、温泉水晶。

 美しかろ?]

[そうなんです!

 あんまり綺麗で、手を伸ばしたら、どうも、魔力もついでに伸びたみたいで…気づいたら繋がってました]

[ふむ。

 ちと見てやろう。

 も少し魔力を伸ばせ]


 なんとなく威厳を感じる水霊さんの言葉を聞いて、ネネーシアは、今度は意識しながら魔力を伸ばした。


[ほう。

 そなた、ねね、と言うのか。

 この世界ではない神の加護をいただいておる。

 『ねっとわーく』と言うスキルらしいぞ]


[ネットワーク…ネットワークがスキル?

 どう言うことなのかしら…?]


 聞き覚えのある単語だが、それに『スキル』がつくと、一体どう言うことになるのか、すぐには理解できなかった。


[ん〜〜

 ルーファーファが思うに、ここに繋がってることに関係するんじゃない?]

[水の眷属の輪に?

 アリステアの娘とはいっても、人の子よ?]

[だって、現にここに繋がっているんだもん。

 水の眷属の仲間ってことかしら?]

[いや…この加護は水とは関係ないのう。

 むしろ、『つなぐ』『つながる』といった力が見える]


[つなぐ…つながる…

 スキル『ネットワーク』ですか]



 ネネーシアは、こうして自分のスキルを知った。

 



説明回になってしまいました。

ストックとか、ないので投稿の間が空いてしまいますが、よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ