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ここ最近――こんなふうになることが増えた。


あおいのちょっとした仕草や行動に、どきりとして息が止まりそうになる。


胸が甘くうずいて止められなくなる。


波乱万丈な人生を送り、家族を支えることに必死だったこともあって、舞は恋愛に縁がなかった。

それどころではなかったのだ。


色恋沙汰いろこいざたにうとい舞に友達は苦笑し、あるいはあなどり、あまり恋愛の話をしなくなっていった。


だから、この気持ちをどうしたらいいのか分からない。誰に話せばいいのか分からない。


浮かんだ感情を、抱えた想いを、持っていく場所がない。


舞は仕事に集中すべく、瞳を閉じて深呼吸をした。


今は、ここで一人前に仕事がこなせるようになろう。


戦力になることはまだ難しいけれど、何か少しでも役立てることがしたい。


そして葵に認めてもらいたい。


今の自分には、それくらいしかできることはないのだから。













舞の所属する商業施設部が現在取り組んでいるのは、『星島ほしじま』の開発プロジェクトだった。


星島は東京都西南に位置する人工島で、その広さは東京ドーム十個分に匹敵する。


四菱地所はその土地を買い取り、遊園地やショッピングモールや公園や高層タワーを建てようと計画しているところだった。


現地視察として星島に出向いた舞は、そこに四井の社用車が停まっているのに気づいて目をみはる。


「篠宮さん、」


思わず見上げると、葵は事もなげに言った。


「お前は会議を聞いていなかったのか?今度のプロジェクトは四井と共同で行う。我々の扱うブロックは東と北の一部分だ。残りは四井が主導で進めていくことになる」


「そんな……!」


異議を唱えようとした舞の前に、車から降りた二人が近づいてきた。


その人影に、舞ははっと息を呑んで立ち尽くす。


「あれ?もしかして小林さん?うわー偶然!久しぶりだねえ」


ふわふわとした茶髪に、犬のように人懐っこい瞳の松尾アキラ。


その隣には、久松爽ひさまつそうが悠然と笑みを浮かべている。

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