表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/292

71

「篠宮さん」


呆然ぼうぜんと口走った舞を見下ろし、葵の表情が驚きに変わる。


「あのときの。小林、だったか」


名前を呼ばれ、胸が大きく高鳴った。


「はい。その節は本当にお世話になりました。おかげさまで内定を頂くことができました。感謝しています」


歯切れよく言って、ぺこりと頭を下げる。


葵は安堵したような笑みを浮かべ、


「それより、悪かったな。冷たかっただろう」


と言って、ポケットから白いハンカチを取り出した。


「大丈夫です」と舞が遠慮しようとしたとき、


『ご歓談中のところ失礼します。人事部長の中島より内定者の方々へメッセージを申し上げたいと思います』


「出るぞ」


「え?」


間抜けな声を出した舞の手を取り、葵はずかずかとホールを横切って出口へ向かう。


舞はうろたえて葵を見上げ、


「あの、篠宮さん。お話があるって」


「どうせくだらない話だろう。誰も聞いちゃいない」


葵は真顔で言い放った。


「でも、」


言いかけた舞に、葵は言い刺した。


「その格好じゃ風邪を引く」


舞は大げさな、と笑いかけたが葵は大真面目だった。


ホテルの一階にある高級ブランドの店に入ると、棚からシャツを無造作に引き抜いて、


「これに着替えろ」


値の張りそうな品物に、舞は首を振って、


「いえ、いいです。もう乾いたし、大丈夫ですから」


だが、葵はぎろりと舞をひとにらみし、


「先輩の言うことに逆らうな、新米」


「……はい」


何だろう。


この気分、前にも味わったことがある気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ