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舞の無事を確認して安心したのか、母は夜勤に出かけていった。
舞は夕飯に踊の好きなハンバーグを作り、二人で楽しく食べた。
久しぶりに心休まる瞬間だった。
テレビを見ながら食後のお茶を飲んでいると、スマホが鳴った。
椿からだろうかと考えつつ見ると、『非通知設定』になっている。
舞は慌ててテレビの電源を切り、
「もしもし」
『もしもし。小林舞様のお電話でよろしいでしょうか』
「はい、そうです」
『こちら四菱地所人事部の折橋と申します。選考結果のご連絡をさせていただきたく、お電話さし上げました』
心臓がひと際大きな音を立てて鳴り響いた。
『一次選考通過おめでとうございます。つきましては、小林様には次の選考に進んでいただきたく、面接のお日にちを決めたいのですが、よろしいでしょうか?』
舞はあわあわと唇をぱくつかせ、
「は、はい!ありがとうございます!!」
必死な声に、相手が少し笑う。顔が熱くなった。
三日後に面接の予約を入れ、電話を切るころには、舞は汗だくになっていた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
服の裾を引っ張って踊が尋ねる。
「とっても嬉しいことがあったの」
舞は踊の肩に手を回して抱きしめた。




