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「電話?」


凍てつく風の吹きつける厳冬も少しずつ緩んできた三月中旬、久々に「呑みに行きましょうよ」と誘ってきた後輩とエレベーターに乗り込んだ千草は、唐突な質問に目をいた。


久松は飄々(ひょうひょう)とした食えない表情で、しかし何とはなしに周囲に気を配っている。


張り詰めた透明な糸が見えるようだった。


「そうです。千草先輩から直接電話があったって学生がいたんですけど」


千草は前髪をかきあげながら、


「心当たりないけどなあ。私、採用担当じゃないし。今は管理職の研修プログラムを作るので手一杯よ。分かってるでしょう?」


「そうですよね」


久松はにこやかに相づちを打った。


先日の険悪なやりとりがまるでなかったかのような態度に、半分安心し、半分寂しく思う。


久松が怪訝そうに、


「どうかしました?」


「何でもない。それで?その子は私が何て言ったって?」


「それは個人情報に属することなのでちょっと言えないんですけど」


珍しく歯切れの悪い物言いに、千草は直感した。


「当ててあげようか。その学生、女でしょう」


久松がかすかに目を泳がせる。


その仕草こそ、何百の言葉よりもずっと雄弁だった。


千草は「呆れた」と肩をすくめる。


「あんた就活生にまで手ぇ出してたの?ホントりない男ね」


「違いますよ。誤解を招くようなこと言わないでください」


久松は否定したが、千草は怪しむように彼を睨んでいる。


どうせ問い詰めてものらりくらりとはぐらかすのだろう。

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