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「どうなんだろうねって?」


目を丸くした舞に、松尾は顔を近づけ、


「ほら。これだけの人数がいたら全員見きれるのかなって。発言しているかどうかはともかく、人柄なんて分からないよね。案外適当に採用決めてるんじゃないのかな」


怖い物知らずの発言にひやりとする。


採用担当者の悪魔的な能力を知らずに、よく言えるものだ。いやはや無知とは恐ろしい。


適当どころか、君は既に人事に顔と名前を覚えられているよとアドバイスしたくなる。


「ディスカッション終わったらさ、一緒に飯食わない?」


軽いノリと高いテンションに、舞は曖昧に苦笑する。


相変わらず自分のペースに人を巻き込む天才だ。相当打たれ強いのか、単なる馬鹿なのか。


「ごめんなさい。私、これが終わったらすぐ次の選考に行かなきゃならないから」


松尾は大げさに身をのけぞらせ、


「ええーっ。そうなんだ。凄いね。どこ受けるの?」


「四菱地所のグループディスカッションなの」


「へえ、四菱も受けてるんだ。本気でデベロッパー志望なんだね」


松尾は大きな目をぐりぐりさせている。


ドアが開き、久松が顔を出す。


「お待たせいたしました。準備が整いましたので会場にご案内します」


まるで舞のことなど目にも入っていないかのような、完璧なよそゆきの笑顔だった。


なぜか、かちんときて、心に怒りの火がともる。


散々こちらのことを引っかき回しておいて、よくもまあ、しらっとした顔で立っていられるものだ。


そもそも、この男が人の弱味につけ込むような真似をしなければ、今ごろ思い悩むこともなかったのに。


落ちつこう。勝手に動揺して落とされてはたまらない。


久松は仕事に関しては誠実だ。


このGDで舞が文句ない成果を出したなら、嫌でも次の選考に上げざるを得ないだろう。


そして次は、他の人間が面接を担当するはずだ。


――このディスカッションさえ乗り切れば、明るい未来が見える。


心に葵の面影を思い浮かべ、舞は深呼吸をした。











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