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アフターストーリー・72
いつの間にか、うとうとと眠っていたらしい。
うっすらと目を開くと、隣には久松が座っていた。
クラブ『百合』から宿泊先のホテルへ移動したらしく、部屋には二人だけのようだった。
しげしげと観察されているのに気づき、舞は恥じらって目を逸らす。
久松は右手で舞の黒髪をすくい、撫でると、耳元に口を寄せて言った。
「……あのときのことを思い出してたんだろ?」
ああ――どうして、この人には分かってしまうんだろう。
呼吸のリズムや目の動き一つで、全てを見透かされてしまう。
舞はおとなしく頷いた。
「二次会、狭山さんも……来られたらよかったですね」
夢見心地のふわふわした気分で呟くと、そっと包みこむように手のひらを握りしめられる。
「あんまりそういうこと言ってると、怒るよ?」
笑いを含んだ不思議に優しい声を聞きながら、舞は眠りの海へゆっくりと沈んでいった。
【アフターストーリー・終】
これにて物語は完結です。
これまで読んでくださった皆さまに、心から感謝申し上げます。
いつかまた、どこかで、お目にかかれますように。




