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アフターストーリー・61

【第三章】






ニューヨークに住み慣れているらしく、一詩の観光案内は堂に入ったものだった。


自由の女神、メトロポリタン美術館、セントラルパーク、タイムズスクエア。


どこへ行っても人、人、人で溢れかえっている。


一詩が手際よくタクシーを手配し、人ごみの中で「こっちだよ」と導いてくれなければ、舞は何度も迷ったり転んだり荷物をすられていたに違いなかった。


笑ったり、珍しがったり、驚いたりと、あっという間に時間は過ぎてゆく。


一詩は人を楽しませる天性の才能と、高い会話力を備えていた。


休憩がてら道端でとんでもない大きさのアイスクリームを買って食べながら、舞はしみじみしていた。


金髪や褐色の髪をした少年少女たちがその脇をすり抜けて走ってゆく。


「ニューヨークの街って、おもちゃ箱を引っくり返したみたい」


予想外のことが次々と起こって息もつけない。


刺激的な毎日を望む者には楽園だろうが、自分だったら一週間で疲れて寝込んでしまうだろう。


何と引き換えにしてでも自由を欲しがる人間がいる一方で、自由を恐れる人間もいるのだと気づいた。


一詩はそれを聞くと、目をぱちくりさせて快活に笑った。


「驚くのはまだまだ早いって。今日案内したのは、本当に一部分だから。もっとびっくりするような場所がいっぱいあるよ」


そして、その数だけ危険も潜んでいる――舞は不意に久松が心配になった。


殺したって死にそうにない人だけれど、何か厄介ごとに巻き込まれたりはしなかったのだろうか。


「狭山さん」


「何?」


舞は言いかけてはっと気づき、喉まで出かかった言葉を何とか押し戻した。


何を考えているのだ、自分は。もう久松のことは忘れると決めたではないか。


怪訝な顔をしている一詩に、舞は慌てて手を振って、


「あ、えっと……そうだ。私、そろそろホテルを探さなきゃいけないので、ここで失礼しますね。今日は本当にどうもありがとうございました」


一詩は時計の短針に目を落とし、


「え?まだ四時だろ?」


「でも、明日のお仕事があるのに邪魔になっちゃいけないし」


そわそわと落ちつかなげな舞の様子に、一詩はすっと目を細めた。


「ああ、そっか。やっぱあいつが気になってるんだ」


心の内をずばり言い当てられて、舞は動揺した。


「そういうわけじゃありませんっ」


思わず口調が強くなる。一詩はにやりと笑った。


「じゃ、いいじゃん。泊まる場所は俺、ちょっと当てがあるんだ。だから、もうちょっと付き合ってよ」


押しの強い笑顔で誘われる。


断る理由もなく、舞は困ったように頷いた。

















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