アフターストーリー・58
舞はパスタを食べながら、起こったことをかなり省略して話した。
トラブルがあって帰国しようと思っているが、フライトを明日まで待たなければならない話をすると、
「それは困ったなあ。もともと、あいつの家に泊まるつもりで来たんだろ?」
舞は頷く。
宿泊費がないわけではなかったが、家庭の事情もあり、無駄遣いをできるような身ではなかった。
狭山も金銭感覚はしっかりしているらしく、眉を寄せて、
「だからって、そこらの安ホテルじゃ心配だしな……。ほんとこっちのホテルって、びっくりするぐらいセキュリティーとか設備が杜撰だからさ」
トイレの水が流れなかったり、シャワーのお湯が出なかったりするのはしょっちゅうだという。
劣悪なホテルだと、金庫から物が盗まれたり、最悪の場合、部屋の鍵が壊れていて押し込み強盗に遭ったりする危険もあるそうだ。
このアメリカの大都会でさえそうなのだから、他の国も推して知るべしだろう。
一詩は猛烈な勢いでピザとハンバーグをたいらげながら、言いにくそうに、
「やっぱあいつのところに戻るのが一番安全だと思うけどなあ」
舞は屈辱に身をわななかせながら、両膝を押さえた。
「……できません。もう二度と、あの人には会わないと決めたんです」
かたくなな態度に、一詩は困ったように苦笑する。
「まあ、何があったのかは聞かないけどさ。恐らく百パーセントあいつが悪いんだろうし」
今度ばかりは、さすがの舞も冷静にはなれなかった。




