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アフターストーリー・55
「……困ったなあ」
舞は空港を出ると、途方に暮れた。
久松のアパートに泊まる予定でやってきたので、今日もホテルを探さなければならない。
しかし、さすがに昨日のような豪華なホテルは金銭的にも厳しい。
踏み潰されそうになりながら、この雑踏を一人で歩くのは、くじけた心には堪えることだった。
こんなに多くの人がいても、友人どころか知り合いさえ一人もおらず、誰とも心を通わすことができない。
みじめな孤独に足元から胸までどっぷりとつかっている。
舞はとりあえずポケットからスマホを取り出すと、おそるおそる電源を入れた。
先ほどから久松が鬼電してきていたので、無視するために電源を切っていたのだった。
案の定、画面には延々と久松爽の名前が並んでいる。
それを憎らしい思いで見つめながらも、舞は迷っていた。
素直に助けを借りるべきなのは分かっている。
明らかに向こうに非があるとはいえ、きちんと話もできず、怒りと興奮に任せてまくし立てしまったのは事実だ。
節度ある大人の態度とは言いがたかった。




