アフターストーリー・53
「楽しそうだねえ」
目を細めて声を弾ませる久松に、葵は心の底から軽蔑した眼差しで、
「これのどこが楽しいっていうんだ?自分の妻が酔い潰れそうになっているのにも気づかなかったのか」
百合は優しく「いいから、横になっていなさい」と言って、膝の上に舞の頭を乗せてやりながら、久松を横目で睨む。
この抜け目ない男が、気づいていなかったとは思えない。絶対わざと放置しておいたのだ。
舞はぐったりとしたまま、百合に体を委ねて目を閉じる。
可憐な美人と華麗な美人が密着している様子は、さながら一枚の画のようだった。
松尾はあからさまに物欲しげな視線を注いでいたが、さすがにコメントは差し控えた。
久松がじっとこちらを見つめている。
目を閉じているので見えないけれど、舞は確かにその視線が頬のあたりを撫でるのが分かった。
――ああ、恥ずかしい、みっともない、情けない。
久松の前では、さんざん醜態をさらしてきた。
これ以上、みっともない姿は見せるまい――そう思いながらも、恥の上塗りを重ねてきた関係だ。
思えば、あのときもそうだった。
渡米してわずか二十時間後、久松の住むアパートで起こった騒動のことを思い出し、舞は体温の高い体がいっそう熱くなるのを感じていた。




