アフターストーリー・52
久松はひらひら手を振って、
「大丈夫大丈夫」
「むしろ好都合、とか思っているんじゃないでしょうね」
氷水を持って戻ってきた百合が、腰に手を当てて凄んだ。
「どうかな?」
久松は笑顔で煙に巻く。
恵の瞳の奥に、瞬時に黒く不吉な光がきらめいた。
怖い目で舞を穴があくほど見つめ、心の中で吐き捨てる。
――何よ、この女。いい歳してぶりっ子して、マジうざい。
舞は舞で、朦朧としながらも大変な迷惑をかけていることが分かってきて、ソファーの上に何とか身を起こそうとする。
「ごめんなさい。私……」
バランスを崩して何かにつかまろうとしたら、何と今度は百合の形のよい乳房をわしづかみしていた。
すぐに手を放したが、マシュマロのような柔らかさと絶妙な弾力が手のひらに感触として残っている。
百合がかすかに唇をすぼめた。
再び葵はそっぽを向いて、気まずく視線を泳がせた。
松尾はもはや鼻血を吹きそうになっており、鼻を押さえたまま狂喜乱舞している。
「ぎゃああ何これ漫画ですか?!このサービスショットは!小林さん絶対狙ってるだろ~!!」
「鼻と口閉じて黙ってて。そのまま死んでもいいから」
恵は冷然とした声で水を差す。
愛嬌のかけらもない迫力満点の顔に、松尾はしゅんと捨てられた子犬のようにうなだれた。




