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アフターストーリー・45
葵の正直な感想に、久松はワインのグラスを傾けながら困ったように笑んだ。
「わりと過酷な仕事だからね。恵にはもっと穏やかな環境で働いてほしいんだけど」
「まあ、それは本人次第だからどうとも言えんが」
「大丈夫だもん。私、頑張れるよ。どんな激務でも」
そう言って恵は、不穏な眼差しで舞を見つめる。
その視線は、どう前向きに捉えても好意的とは言いがたいものだった。
「ていうかあ、恵ちゃんは卒業したら俺とけっ」
「篠宮さんは、今のお仕事の前は舞さんの上司だったんですよね?」
松尾の言葉を完全に無視して、恵は完璧なよそゆきの笑顔で尋ねる。
葵は頷いた。
「ああ」
「舞さんは、職場でどんな感じだったんですか?やっぱり、バリキャリですか? さぞかしモテモテだったんでしょうね~」
目の前で葵の評価を聞くのが怖く、舞が居たたまれない気分になっていると、
「あのー、篠宮さん。ちょっといいっすか」
対抗心を瞳にめらめら燃やしながら、松尾が喧嘩腰で言った。




