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アフターストーリー・43
――どうして、あんな人のためにここまで来てしまったのだろう。
走り疲れて、へとへとになって歩きながら、舞は目を真っ赤にして泣き続けていた。
最初から、ろくでもない男だということは分かっていたはずだ。
なのに、この人にはいいところもある、信じてみようと思った自分が憎らしい。
久松は、舞の心に太陽のように鮮烈な印象を残したまま日本を去った。
会えない時間は寂しく、声を聞けば心に温かな光が灯った。
もしかしたら、自分は彼を好きなのかもしれない、と思うようにさえなっていたというのに。
道行くカップルの一人と肩がぶつかって、舞はよろめいて荷物を取り落とす。
一度立ち止まったら、もう歩けなかった。
ぽっかりと胸に穴が空いたように、絶望感と虚しさが襲う。
こんなにも広い国の中で、たった一人きり。
裏切られて、行く当てもない。
舞は涙を拭いつつ立ち上がった。
空港へ行こう。日本へ帰ろう。
忘れるのだ。
久松のことも、彼にまつわる出来事も、自分の想いも――全てを。
【第一章・終】




