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アフターストーリー・36
「……嘘だろ?」
呆然とした声が言った。
それを言いたいのは自分のほうだった。
もはや、事の次第を問いただす気力もわかず、舞はくるりと背を向けた。
――ひどい。
ひどい。何て酷いんだろう。信じられない。鬼だ。悪魔だ。
人がやっとの思いでここまで来たのに、嘘までついて気持ちを踏みにじるなんて。
立ち去ろうとした舞の腕を慌ててつかんで、
「ちょっと待った!」
久松は玄関まで引っ張りこんだ。
「放してください!放して!!!」
舞は金切り声で叫び、腕がちぎれんばかりに暴れた。
思いつく限りの罵倒をしてやろうと思うが、悔しくて何も言葉にならない。
こんなことになるなら、アメリカなんて来なければよかった。
悲しみと怒りと、裏切られた痛みで胸が潰れんばかりに痛い。
久松は片手で舞の肩を押さえ、もう片方の手でドアを閉めつけてロックをかけた。
興奮していた舞は、彼の手が妙に熱いことに気づかなかった。




