245/292
アフターストーリー・25
一詩もそれは分かっているらしく、舞を見つめてにやりと共犯者めいた笑みを浮かべる。
そして、どこか遠い瞳をして、言った。
「俺はね、もともと四井の人間じゃないんだ」
予想の斜め上をいく回答に、舞は首を傾げる。
「じゃあ、以前は他の会社で……?」
一詩は「うん」と頷くと、曖昧な笑みで、
「四年前まで往友不動産で働いていたんだ。そこに声がかかって、一応ヘッドハンティングされた形になるのかな」
謙虚な物言いだったが、静かな自信を感じさせた。
往友不動産は四井、四菱に次ぐ業界第三位の不動産会社だ。
だが、その仕事内容は都市開発ではなく、主に住宅の分野に重きを置いている。
都市開発を行う際も、単独デベロッパーというより、四井や四菱と合同でプロジェクトを遂行したり、資金提供のみという場合も多い。
歴然とした力関係もあって、弱い立場に置かれているため、発言権も小さいものだという印象があった。
そこから見出されてヘッドハンティングされたのだ、一詩の手腕は相当なものだろう。
久松とともに若くしてアメリカに送られ、プロジェクトを任されていることからも、有能さは疑うべくもない。




