アフターストーリー・22
「……どうしてですか?」
唇がわななくのを止められない。
知らない街、知らない人だらけの場所で、こんなに不安で、こんなにも心細いのに。
久松は珍しく困ったような声で、
『ごめんね。先方のミスで仕事のスケジュールが押してて、今日は泊まりになるかもしれないんだ。待たせるのも悪いし、この街、夜はさらに治安が悪いから出歩かないほうがいいと思って』
仕方のないこととはいえ、会えるまでの時間が先延ばしになったのは苦痛だった。
舞にも仕事がある。
土日をはさんで月曜まで滞在すれば、火曜の朝には帰国しなければならないのだ。
その大切な時間が、どんどん削り取られていくというのに。
文句を言いたくなるのをぐっと堪えて、舞はうつむいた。
「……分かりました。じゃあ、泊まるところが決まったら連絡します」
浮かない表情で電話を切った舞に、一詩はすぐに声をかけた。
「どうした?何かあったの」
この人に迷惑をかけてはいけない。
舞は気持ちを切りかえようとして、無理やり笑顔を浮かべた。
「久松さん、お仕事が忙しくて今日は会えないって。泊まるところを探さないと」
大したことではない風を装ったが、指先が小刻みに震えるのは止めようがなかった。




