24
大型書店の雑誌コーナーは、背広姿の男性や年配の女性でごった返していた。
舞は人ごみを避けながら、ビジネス雑誌の置かれている一角に向かう。
OB訪問以来、週に1度は立ち寄って情報収集することを心がけていた。
仕事の都合上、新聞には目を通すようになっていたが、目標達成のためにはさらなる努力が必要だと痛感せざるをえなかった。
あのときぶつけられた、久松の台詞がよみがえる。
優しく真剣な久松は、まるで別人だった。
だが、その後の彼の仕打ちを考えると、少しでも心を許しかけたことが悔やまれてならない。
恥ずかしさと屈辱が生々しく込み上げ、舞は強く首を振った。
棚に置かれている『月刊経済白書』に「美しすぎるデベロッパー夢の対談」という見出しが躍っているのを発見し、何気なく手に取る。
ぱらぱらとページをめくり、記事のトップページを飾る写真を見て、思わず雑誌を取り落とした。
そこには、ゆったりとしたソファーに腰かけて微笑む久松爽の姿があった。
だが、舞がそれ以上に驚いたのは、隣の人物だった。
まるで夢のように思われて目をこする。
そこにいたのは、あの日四井不動産を訪れる前に自分を助けてくれた青年だった。
灰色のスーツに身を包み、開いた膝の上で指を組み合わせている。
理智的な面差しも、眼鏡も、意志の強そうな眉も、あのときの彼に間違いない。
心臓を右手で押さえながら、舞は少しずつ呼吸を整えた。
まさか彼もデベロッパーだったとは。その上、久松と一緒に映っているとは。
彼のプロフィールにはこうあった。
『篠宮葵。四菱地所商業施設開発部所属。卓越した手腕でオーナーと消費者のニーズを汲み取り、クリエイティブな発想で理想のリゾートを作り上げる精鋭社員である。現在までに手がけた案件は、豊洲るるぽーと、横浜アクアタワー、池袋ムーンライトタウンなど。』
葵の襟元に光る社章。
思い当たって、舞は息を飲んだ。
どうして今まで気づかなかったのだろう。
四葉のクローバーを模した家紋。あれは四菱財閥のトレードマークではないか。
道理で四井不動産の名前を出したときに不機嫌になるはずだ。
四井は業界1位の売上を誇る、四菱にとって宿敵とも言える企業だった。
夢中で記事に目を走らせる。
難しい専門用語や込み入ったプロジェクトの内容説明のせいで、あまり意味がつかめなかったが、ともかく2人が四井と四菱の代表として登場し、代理戦争を行っているような雰囲気だった。




