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「どうしてですか?」


久松は1本ずつ指を立て、


「まず根本的に、うちへ来たいっていう熱意が感じられない。どんな優秀な人間でも、やる気のない奴はりたくないんだよ。ただでさえ雇用減らそうとしてるご時世じせいだからね。

次に、声が小さくて下ばかり向いているから、自信がなさそう。簡単な質問にまで困られると、いろいろと突っ込みづらい。仕事を任せられる気がしない。

最後に致命的なのが、君がありのままを言おうとしていること」


納得がいかず、不満げな顔をする舞の様子を見て、久松は優しく瞳をゆるめた。


組んだ指の上にあごを乗せ、


「別に嘘をつけと言ってるわけじゃない。ただ、自分にとって不利な情報を、わざわざ相手に与える必要はないってことだよ。分かりやすく伝えるために、自分なりに情報を取捨選することも大事。


有能なのは分かるけど、今の君じゃ何が言いたいのかさっぱり伝わらないし、どれを強みとして押し出したいのかも分からない。


ありのままの自分なんて誰も求めてないんだよ。欲しいのは『企業に利益を与えられる素質をもった存在』。それにいかに自分を当てはめてつなげていくかってことだ。

これは他社においても言えることだから、その辺整理したほうがいいよ」


思いがけないまっとうな忠告に、舞は呆気にとられていた。


あまりにも親切すぎる。何か裏があるのではないか。


まじまじと見つめた久松の顔にからかいの色はない。真剣な表情が余計に舞を動揺させた。


「何が目的なんですか」


期待を裏切られるのが怖くて、先に口にする。


「俺も5年前は就活してたからね。

結果はどうあれ、納得いく形で就活を終わらせてほしいって企業の人間は言うけど、内定っていう結果が出て初めて、納得いくための選択をする余地ができるんだよ。

だから、自分で決めるために、選ぶために、結果を出してほしい。

自分で決めた道なら、後悔せずにやり通せると思うから」


光を浴びて輝く瞳は、吸い込まれそうな魅力があった。


久松の顔が正面から見られない。


一体この人は何なの? どうしてそんなことを言うのだろう。


舞の困惑ぶりを観察すると、久松は、


「ま、この7点をどうやって挽回ばんかいするかって話だよ。

言っておくけどOB面談とはいえ、この点数じゃ、まず上には上がれないからね」


本日最大の嫌な予感に、思わず舞は身構えた。


「何でそんな嫌な顔するかね。寝て内定取れるなら楽なもんじゃん」


舞の目が凍りつく。


長い沈黙の後、喉の奥から絞りだすような声が言った。


「……ひどい」


「何とでも」


応じる久松は唇の端をつり上げ、凶悪に笑った。











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