アフターストーリー・9
千草が笑い声をあげて葵の背中をたたき、
「何、娘を手放す父親みたいなこと言ってるのよ」
葵はしばしきょとんとしていたが、ようやく思い当たったらしく、
「ああ……そうですよね。でも、娘を持った父親ってこんな気分なのかもしれないと思いましたよ。小林が嫁に行くことが、まだ俺の中でしっくりこないというか、何だか信じられないです」
しんみりと言った葵は、目の前に舞がいることを忘れてしまっているように見えた。
舞は嬉しいような淋しいような気分でうつむき、恵が瞳をキラリと光らせる。
百合が葵に無言で厳しい視線を送ると、やっと我に返ったのか舞を見て、
「もちろん、俺はお前の結婚を喜んでいるぞ。誤解するなよ」
「あ……はい。ありがとうございます」
今後ともよろしくお願いいたします、と舞が頭を下げかけたとき、
「俺の嫁を小林って呼ぶのやめてくれないかな、四菱様。今日から舞は久松家の人間だからさ」
久松が取り澄ました顔で核弾頭を投げつける。
葵の顔つきがにわかに険しくなった。
「え?四菱様って何すか?」
相変わらず全く空気を読まずに口を挟む松尾の背中を、恵が思い切りたたきつけた。
松尾は飲んでいたビールにむせ返る。
千草は百合と示し合わせたように目配せすると、
「それにしても、久松君の仕事の速さには驚いたわ。三年かかる仕事を、一年八ヶ月で終わらせて戻ってくるなんてね」
「愛よねえ、愛」
百合も合いの手を入れつつ、ちらりと舞に視線をやる。




