アフターストーリー・8
乾杯を済ませておのおのが酒を口にすると、真っ先に口を開いたのはやはり松尾だった。
「本当にいい式でしたねー。久松先輩、羨ましいっす」
子犬のように懐っこい瞳で見上げられて、久松は軽く笑う。
「私は、お兄ちゃんと結婚できる舞さんが羨ましいな。――本当に」
恵は砂糖菓子のように甘ったるい声で言うと、兄の腕に自分の手を絡め、舞のことを迫力のある視線で睨みつける。
舞は言葉に詰まって、困ったように眉尻を下げた。
松尾は相変わらず能天気な様子で、
「大丈夫だよ!恵ちゃんは俺が、世界一幸せな花嫁に」
「ねえお兄ちゃん、舞さんのどういうところが好きになったの?」
松尾の言葉を完全に無視して、恵は久松に問うた。
百合が口にしていた深紅のカクテルをそっとテーブルにおろし、
「恵ちゃん、そういうことは聞かないのが大人のマナーよ?いろいろあるのよ、男女の間には」
優しくたしなめられて、恵はあくまでも可愛らしく頭に手を当てた。
「えへっ。ごめんなさーい。気になったから、つい」
「だが、まさか本当に結婚するとはな。何だか不思議な気分だ」
葵が感慨深く言ったので、舞は飲んでいたレモンサワーを噴き出しそうになった。




