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簡素なワンピースを着た舞は、化粧もしていない。


鞄も持っておらず、服に似合わないちぐはぐな靴を履いていた。


だが、そんなことはどうでもよかった。


信じられない。舞がいる。


目の前に、会いたくてたまらなかった女性が立っている。


身体の横で両手を握りしめると、舞は懸命に声を上げた。


「久松さん、……私、」


雛のように震える姿は、初めて会ったときと変わらない。


彼女はいつも怖がりで臆病で、引っ込み思案だった。


それでも必死で顔を上げ、伝えることをやめようとしなかった。


久松は足を踏み出しかけて、躊躇ためらうように立ち止まる。


近づくのが怖かった。


自分が見ているのは夢で、手を触れた途端、過酷な現実へと引き戻されてしまうのではないかと。


「あなたが行ってしまうって聞いて、私、怖くて。もう二度とあなたに会えないんだって思ったら、いろんな気持ちが一気に込み上げてきて。自分でもよく分からないくらい、悲しくて寂しくてたまらなかった」


喉がへばりついて声が出ない。


硬直し立ちすくむ久松の前で、舞は決意を映した眼差しで言った。


「私、あなたのことがもっと知りたい。いいところも、悪いところも、全部。

それから……私のことも、分かってもらいたい。一緒にいると、怖いし、ハラハラしてばっかりだったけれど、嬉しいこともたくさんあったから。だから」


もうこらえることなどできなかった。


自分の恐怖などどうでもいい。夢から覚めてもかまうものか。


久松は全ての荷物をその場に置き去りにして、舞の華奢な体を折れんばかりに抱きしめた。


舞は一瞬びくりとしたが、抵抗せずに細い腕を背中に回す。

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