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「いいから言いなさい。くだらないプライドは捨てて。そうしなきゃあなた、また後悔することになるわよ」


「勘弁してくださいよ。俺、前に格好悪いこと散々言ったじゃないですか。それに、もういいんです」


力なくうなだれた久松を見やると、千草は腰に手を当てて言った。


「先輩命令よ」


自分がいくら出世して立場が変わろうと、きっとこの関係だけは変わらないのだろう。


久松は確信した。


けれどそれは、そう悪くないことのような気がした。


ミントガムを噛んでいるみたいに、胸がスースーする。


心を吹き抜ける冷たい風を感じながら、久松はやけっぱちな気分で言った。


「分かりました。言いますよ。言えばいいんでしょう?


俺は小林舞を愛しています。心の底から。ふられても未練がましく思い続けて、夜も眠れないです。正直参ってます。仕事も全く手につかなくて、ミスを連発して怒られるし。我ながら情けないけど、こればかりは仕方ないじゃないですか。忘れることなんてできやしない。三年経てば、彼女は俺を忘れるだろうし、他の男の妻になってるかもしれません。

それを考えただけでもう目の前が真っ暗になって――死にそうなくらい辛いです」


これでいいですか?と久松は反抗的に目顔で問いかける。


公衆の面前でこんなこっ恥ずかしいことを言わせるなんて、本当に性格が悪い。理不尽な要求だ。


けれど、これで恥ずかしすぎて当分日本には帰れないから、ある意味ちょうどいいかもしれない。


だが、千草が肩を震わせて笑っているのに気づいて、愕然とした。


「千草先輩?」


「……ごめんごめん。だってあなた、めちゃめちゃダサいんだもん。格好つけのイケメンが台なしだと思ったら、ホントおかしくって」


赤い怒りが胸に押し寄せ、久松が怒鳴り声を上げようとしたとき、


「そんなみっともなくて情けないあなたに――私からの餞別せんべつよ」


千草は悪戯っぽく笑って言うと、体を引いてすっと右に平行移動した。


その背後から顔を真っ赤にした舞の姿が見えたとき、久松は心臓が止まるかと思った。

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