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舞が乗り込んでから約二十分、葵は無言のまま、かなりの速度で車を走らせていた。
聞きたいことはたくさんあったが、そのどれもが相応しくないような気がして、舞はうつむいた。
こうやって葵のそばにいるのに、頭に浮かぶのは久松の顔ばかりであることに、自分でも動揺していた。
「聞かないのか」
高速に乗ってETCをくぐると、さらにアクセルを踏み込みながら葵は低く問うた。
舞は速度の負荷を感じながら、シートベルトをぎゅっと握りしめ、
「何を、でしょうか」
「全部だよ。俺がなぜお前を乗せて成田まで走っているのか、なぜ久松の転勤を知っているのか、なぜ別れた女のために力を貸すのか」
「聞いたら……何だか余計に混乱しそうで」
舞は手ぐしで髪を整えながら、ちらりとバックミラーを見つめる。
そこに映る自分の瞳は、不安に揺れていた。
葵は息をつくと、
「じゃあ何か?お前は俺がこのまま空港へ行かず、崖に突っ込んで心中してもいいわけか」
言葉に含まれた棘がちくりと胸を刺す。
舞は毅然とこうべを上げて言い返した。
「篠宮さんは、そんなことはしません」
葵は苦虫を噛み潰した顔で、
「……お前が何も聞かないのなら、俺が聞くぞ」
舞は、どんな質問が来るのかと思って身構えた。
「はい」




