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よく見ると、それらは全て『百合さん』となっている。


それも朝の九時から、数分刻みにかなり短い間隔でかけ直されている。


かけ直したものか考え込んでいると、再びスマホがぶるぶる震え出した。


まるで火傷やけどするかのように慌てて取り扱い、反射的に通話ボタンを押す。


「もしもし?」


『何してるのよあんたはもう!』


百合の甲高い声がダイレクトに鼓膜を刺激して、舞は耳が変になったかと思った。


とりあえず受話器の前で平謝りをする。


「すみません百合さん。朝から何度もかけてもらってたみたいで。私、今起きたところで」


『そんなことはどうでもいいわ!とにかく時間がないの。いい?!

そろそろ篠宮さんの車がそっちにつくころだから、とにかく財布とスマホだけ持って乗りなさい。

言うこと聞かなかったら承知しないからね』


突如飛び出してきた葵の名前と、急な話の展開に、舞はしどろもどろになった。


「どういうことですか?意味が」


そのとき、ピンポーンとチャイムの音がしたので舞は飛び上がった。


それは百合にも聞こえたようで、


『ほら来た!早く行きなさい!』


「でも、私、」


舞はこんがらがる頭の中で、百合は葵と面識があったのだろうかと考えていた。


葵が『玉響』を利用していたことは知っているが、彼が百合を指名していたのだろうか。


「おい、開けろ!」


ドンドンと扉をたたく音がして、まぎれもない葵の声がした。


それも、とても怒っている。


信じられないとか、何かの冗談ではないのかという考えに縛りつけられて、その場に立ち尽くす舞の背中を、百合の言葉が強く突き飛ばした。


『今日、爽ちゃんはアメリカに発つのよ』


瞬時に、頭の中が白い閃光に包まれた。


アメリカ?

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