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土曜日の朝、舞はいつものように一週間分の疲れを癒すように眠りこけていた。
夢の中で、久松が泣いているのを見た。
あまりにもあり得ないことだったので、それだけですぐに夢だと分かった。
声をかけても振り向かず背を向けたまま、手を伸ばしてもどんどん遠くへ行ってしまう。
なぜだか胸騒ぎがして、舞は叫んだ。
「久松さん!」
久松はようやく立ち止まって、舞の方を振り返った。
その表情のあまりの切なさに、舞は嫌な予感でいっぱいになった。
「そんな顔しないでください。どこに行くんですか?」
久松は優しくその首を振って、
「さよなら――舞ちゃん」
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「久松さん!!」
自分が出した大声に飛び上がって、舞は布団の上で目覚めた。
マラソンを走りきった後のように鼓動が早い。
真夏だというのに、背中は冷や汗でぐっしょり濡れていた。
誰かを起こしてしまったかと思い、見回すと、家族の姿はない。
襖を開けて居間へ行くと、テーブルの上に置き手紙があった。
《舞へ お母さんは五時までパート、踊は友達とプールに行っています。
冷凍庫のアイスは食べてOK。洗濯物を取りこんでおいてください。留守番よろしくね 》
ほっと胸を撫でおろし、床へしゃがみこむ。
壁時計を見上げると、午前十一時を指していた。
部屋で着がえながらスマホを充電器につなぐと、ブーッと鳴って自己主張する。
昨日の夜に充電し忘れたせいで、電源が切れていたらしい。
画面を見て、舞はぎょっとした。
「着信十二件?!」




