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「もう一度、ちゃんと伝えにきたんだ。多分、これが最後になると思う」


戦場におもむく兵士のような面持ちで、久松は告げた。


「好きだ。俺と付き合って、結婚してほしい。

身勝手なことを言っているのは分かってる。君にとって俺は最低な男だし、それはこれからも変わらないだろう。だけど、それでも俺は君が好きなんだ。諦められないんだ」


舞は信じられない思いで目の前の男を見つめていた。


これが本当に、あの久松なのだろうか?


一途いちずな瞳をし、心からの声で語りかけてくる。


余裕など欠片もない、ひたむきな一生懸命さが伝わってくる。


胸が感動に打ち震える。体が熱くなる。舞の心は激しく揺さぶられた。


「嘘や冗談じゃない。君を一人の女性として愛している。――信じてくれ」


両手を握られ、舞はどぎまぎと久松を見上げた。


心臓が破裂せんばかりに鳴り響き、鼓動が指先まで伝わりそうだ。


さまざまな思いが心の中に流れ込んできて、記憶が一気に脳裏のうりを駆けめぐった。


初めて出会った日のこと。就職活動と『玉響たまゆら』の仕事でくたくたになったときのこと。


鮮やかな怒りや、驚きや、戸惑い。内定を得るまでの遠く果てしない道のり。


励ましてくれたかと思えば、奈落の底に突き落とされたこと。


車に乗せられて見た、夢のような夜景。


何度この人の前で泣いただろうか。みっともなく無様ぶざまなところばかりを見せてきた。


けれど久松の前にいる自分は、いつも素の自分だった。


久松が、どうして自分を好きになったのかは分からない。


だが、ここまで真剣な告白を受けたのは初めてだった。


それだけは揺るぎない事実だった。


舞は天を仰いで大きく息を吸い込む。目頭めがしらが熱く滲むのが分かった。


「……おかしいですよ、久松さん」


久松が弾かれたように顔を上げる。

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