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久松は愕然とした。
自分の好意がそんなふうに解釈されているとは思わなかった。
どう言葉で説明しても、深く掘った溝が理解を拒む。
そしてこの溝を掘ったのは、他ならぬ自分自身だ。
「どうすればいい。どうすれば信じてもらえる?」
必死の思いでそう言ったとき、久松は遠い記憶の中で自分が言ったことを思い出した。
『どうすればいいかは自分で考えろって』
あのとき、その言葉が引き金となって、舞は『何でもします』と言ったのだ。
全く逆の立場に身を置いて、ようやく、久松は自分がどれほど残酷なことをしていたかに気づいた。
窮地に立たされ、それ以外に何の方法がある?
どうあがいても自分ができることなど知れている。
最初から負けの決まったゲームに挑んだようなものだ。
久松は生まれて初めて、痛切に時を戻したいと願った。
舞と出会ったあの日に戻って、自分の頬を引っぱたいてやりたかった。
お前の目の前にいる女性は、お前が将来愛する人だ、真心をこめて大事にしろと叫びたかった。
舞は気づいているのかいないのか、淋しそうに微笑むと、首を振った。
「いいんです。たとえ好きの意味が違っていたとしても、嘘だとしても、やっぱり嬉しかった。それだけで十分です。ありがとうございました」
優しく言って頭を下げられ、久松はそれ以上何も言うことができなかった。
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