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「久松さん……離してください」
片桐が去った後、公園のベンチで、舞のくぐもった声が響いた。
久松は余計にむきになって舞を抱きしめる。まるで子供が母親にするように。
「お願いします。私の話を聞いてください」
舞の冷静さにようやく目を覚ましたのか、久松は手を離した。
「私……久松さんのこと大嫌いでした。憎んでいました」
当然の事実だが、今の久松にとってその言葉は胸に堪えた。
因果応報という言葉を深く噛みしめる。
舞は葵にもらった指輪を握りしめながら、震える声で続ける。
「だけど今はもう、あなたのことを許しています。ひどいし最低だと思うけど、私のことを助けてくれた。意地悪だけど、優しくしてくれることもあった。悪いところもあるけど、良いところもある、一人の人間なんだって分かったから」
一つ一つ、たどたどしくも丁寧に言葉を選びながら、舞は語り続ける。
「でも男の人としては、私はあなたが怖いです。信じることができません。あなたは私を好きって言ってくれたけど、その好きの意味も、私の考える好きとは違ってるんじゃないかって思うから」
「違わないよ」
久松は即座に否定したが、舞は真っすぐな瞳をしたまま首を振った。
「多分あなたは、私が前みたいに大人しく従わないから、そういう人間が珍しいから、言うことを聞かせたいから、そういうふうに言っているんだと思います。
私のことを本当の意味で好きなわけじゃない」




