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片桐は目をみはって首を振る。


「いいえ、とんでもございません。私のしたことを考えれば当然のむくいです」


葵は片頬だけで笑むと、


「お前は鉄でできているのか?意地ばかり強くてかなわんな」


「申し訳ありません。かわいげがないのが性分ですので」


申し述べながら、片桐は葵を取り巻く氷のような雰囲気がゆるむのを感じていた。


葵はスーツの襟元を整えると、覇気のある声で、


「お前の言葉を聞いていると、自分がただのわがままな子供だという気がしてくる。そうでないことを証明するためにも、俺は上に行く」


別れ際の舞の清冽せいれつな表情が目に浮かぶ。


誇ってくださいと言ったあのとき、彼女はどんな気持ちで自分の背中を押したのだろう。


自分とは比べ物にならないほどの苦労を重ねてきた彼女は、もしかしたら、葵以上に葵の背負うものを、進むべき道を理解していたのかもしれなかった。


片桐の表情が驚愕からゆっくりと喜びに変わってゆくのを見て、葵は言い刺した。


「お前は言ったな。俺には四菱を背負う資格と責任があると。だが俺は、そんな能力が自分にあるとは思わん。有能な人間は掃いて捨てるほどいるし、俺の代わりなど誰でも務まるからな。


だが、それでも、真正面から挑んでやる。親父の手から自由をもぎとって、引導を渡してやるよ」


そう言って顔を上げた葵は、間違いなく王者の風格を漂わせていた。


「それが俺の誇りだ」


片桐は涙ぐみ、膝をついてこうべを垂れた。


確固たる決意を胸に、葵は心の中で愛しい女性の面影を思い浮かべて告げた。


ありがとうと――さようならを。




















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