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ようやく失言に気づき、舞ははっと口を覆う。


「ごめんなさい。私、何も考えていなくて」


「いいのよ」


と百合は笑ったが、その目をかすかに険しくして、


「あなたも1人で接客っていうのに慣れてないから、私としてもついてあげたいのは山々なんだけど、今日は自分のお客様のお相手をするので手一杯なのよ」


「そうですよね。本当にごめんなさい。私ったら、考えなしに失礼なことを」


「気にしないで。それより、早く行きなさいな」


母親のように頭を撫でられ、舞は小走りになって席に向かう。


だが、角を曲がったところで伸びてきた脚につまずいて、派手に転んでしまった。


牡丹ぼたんと、取り巻きの2人のかん高い笑い声が突き刺さる。


痛みはなかったが、恥ずかしさに顔が火照った。


「あんた、いつまでこの店にいるつもり?」


「指名も取れない、客を喜ばせることもできない、水割り一つ作れない、使えないグズが、したり顔で居座ってさあ」


「何とか言ったらどうなの、え?!」


小突かれ、壁際に追い詰められた舞の喉元に、とがった爪が突き刺さる。


牡丹は舞を睨みつけ、耳元で言った。


「あんた、あの客と寝たんでしょ」


舞が顔面蒼白がんめんそうはくになるのを見て、せせら笑う。


「ワタシなんにも知りませんって顔しといて、よくやるよね。百合が知ったら何て言うかしら。

あんたのこと、軽蔑するでしょうね。


でも私には分かってた。あんたは所詮しょせん、その程度の女。若さと身体しかとりえのない、頭の空っぽな馬鹿女なんだよ。


そのくせ、『私はあんたたちとは違う』って、すました顔で私たちを見下してる。


――思い上がるのもいい加減にしろよ」


牡丹のピンヒールが舞の足をえぐった。

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