12
ようやく失言に気づき、舞ははっと口を覆う。
「ごめんなさい。私、何も考えていなくて」
「いいのよ」
と百合は笑ったが、その目をかすかに険しくして、
「あなたも1人で接客っていうのに慣れてないから、私としてもついてあげたいのは山々なんだけど、今日は自分のお客様のお相手をするので手一杯なのよ」
「そうですよね。本当にごめんなさい。私ったら、考えなしに失礼なことを」
「気にしないで。それより、早く行きなさいな」
母親のように頭を撫でられ、舞は小走りになって席に向かう。
だが、角を曲がったところで伸びてきた脚につまずいて、派手に転んでしまった。
牡丹と、取り巻きの2人のかん高い笑い声が突き刺さる。
痛みはなかったが、恥ずかしさに顔が火照った。
「あんた、いつまでこの店にいるつもり?」
「指名も取れない、客を喜ばせることもできない、水割り一つ作れない、使えないグズが、したり顔で居座ってさあ」
「何とか言ったらどうなの、え?!」
小突かれ、壁際に追い詰められた舞の喉元に、とがった爪が突き刺さる。
牡丹は舞を睨みつけ、耳元で言った。
「あんた、あの客と寝たんでしょ」
舞が顔面蒼白になるのを見て、せせら笑う。
「ワタシなんにも知りませんって顔しといて、よくやるよね。百合が知ったら何て言うかしら。
あんたのこと、軽蔑するでしょうね。
でも私には分かってた。あんたは所詮、その程度の女。若さと身体しかとりえのない、頭の空っぽな馬鹿女なんだよ。
そのくせ、『私はあんたたちとは違う』って、すました顔で私たちを見下してる。
――思い上がるのもいい加減にしろよ」
牡丹のピンヒールが舞の足をえぐった。




