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久松が、どのようにして葵を千草の結婚式に引っ張りだしたのかは分からない。


だが、頭の切れる彼のことだ。


本気でこうしようと決めたなら、実現できないことなどないのだろう。


舞は久松に日時と場所を指定され、一部始終を見守ることができた。


彼が自分の要求を呑んだのは気まぐれだったのか、それとも舞にさらなる貸しを作るためなのか――あるいはその両方なのか。


どちらにせよ、舞は再び痛烈な無力感を味わっていた。


結局、事を前に自分ができるのは、誰かに頼みこんだり泣きついたりすることだけなのだ。


実力で勝ち取った内定とはいえ、新人の自分ができることなど無に等しい。


「やっぱり、私じゃ駄目なのかな」


「随分と大きな独り言だな」


舞は飛び上がった。


葵が呆れたような顔でそこに立っていた。


親指と人さし指に挟まれた煙草から、ゆるく紫煙がたなびいている。


「いつからそこに」


「お前が街を見たり空を見たり忙しくしてるときからだ」


いたならどうして声をかけてくれなかったんですか、と言いかけた言葉を飲み込む。


この間、葵の運転する車から飛び降りるようにして帰って以来、舞は気まずさのあまり葵との会話を避けていた。


二人きりになることがあっても、最低限の業務連絡以外は一切口を開かないつもりだった。


ぎこちない表情で黙りこくる舞の様子を静観し、葵はぽつりと言った。


「この間は悪かったな」


舞はぎょっとした。


あのクールで寡黙な葵が、きまり悪げに視線をそよがせている。


茫然としたまま、


「え、何で」


「だから悪かったと言っている。何度も言わせるな」


葵は照れたようにそっぽを向いた。


舞は胸の奥にじわり、と温かなものが込み上げてくるのを感じていた。


「いえ。私のほうこそ差し出口をたたいて申し訳ありませんでした」


「お前は何も謝るようなことはしていない」


葵はきっぱり言うと、携帯灰皿に煙草を押しつけてもみ消した。

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