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同日同刻。


四菱地所東京本社ビルの屋上で、舞はぼんやりと眼下がんかに広がる景色を眺めていた。


林立りんりつするビルの群れと、その隙間を縫うようにしてせわしなく行きかう人々。


鉄道、郵便局、銀行、官公庁、学校。


点と点、線と線が無数につながりあって、この広大な街を形成している。


社会を動かす歯車の一つに、自分はなれているのだろうか。


見上げる空はどこまでも蒼く澄み切っていて、降り注ぐ日差しは夏を予感させる。


あの人も――あの人たちも、同じ空の下で働いているのだ。


舞は先日の日曜日――都内の帝王ホテルで執り行われた千草の結婚式を思い出していた。







晴れ上がった空の下、花嫁の投げたブーケは美しい放物線を描いて少女の胸元へと吸い込まれるように落ちていく。


赤や青や白や紫の花弁が舞い落ちるなか、純白のウェディングドレスに身を包んだ千草と花婿はなむこが、赤い絨毯を踏んで現れる。


悲鳴にも似た歓声が巻き起こり、シャッターの音とフラッシュの閃光が交錯こうさくした。


遠くでそれを見つめながら、舞は祈るような思いで両手を組み合わせていた。


たくさんの花束を受け取りながら、千草は喜びでいっぱいの笑顔を振りまいている。


世界一幸福な花嫁がそこにはいた。


その花嫁に近づく人影があり、舞は目を見開く。


盛装に身を包んだ久松に促されるようにして、葵が花束を持ち、新郎新婦を送り出す花道の最後尾についた。


千草は友人や職場の人間との挨拶に忙しく、葵に気づいていない。


葵の表情は遠目からでも分かるほどに強張っており、舞ははらはらしながら胸を押さえた。


そして――とうとう千草が列の最後尾まで歩み終え、葵の姿に気づく。


その瞳がふっと焦点を失い、それからもう一度結ばれる。


まばたきを数回繰り返し、千草は驚いた表情で葵から久松へ視線を移した。


「……あなたの仕業しわざね」


その声に怒気はこもっていなかった。まるでいたずらをした弟を叱る姉のように。

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