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第❻話 怪力・無口・殺人鬼!? ≪FINAL≫



安田青太(やすだ あおた)はパニックになっていた。

ずれた丸メガネもそのままに冷や汗ばかりが出てくる。


旧図書館の映画上映会に参加しただけなのに、

なんとそのスクリーンから殺人鬼が出てきてオノを振り回し

実際にパイプ椅子を壊したのだ。


「警察に電話しなきゃ……!」


速水(はやみ)なずなはポケットからスマートフォンを出す。


そして、110とタップしようとするが……


「うわぁ、圏外だ……」


なずなのその発言を聞いて、

青太はさらに頭が真っ白になる。


「ど、どしよ…………」



 ザ……

  ザ……ザ……

   ザ……ザ……ザ…… ザ……



殺人鬼の足音が大きくなっていく。


青太となずなはガラス戸の前で、目を合わせて焦る。


「な、なんでこんな目に…………」


すると、なずなはそこで「アアアアアアアァ!!!!!」と大声を上げた。

青太はびくんと体を震わせ、軽い失禁をしてしまうが、口には出さない。


「そういうことか! そういうことなのか」

なずなは肩まで伸びる黒髪を振り乱し、薄ら笑いで目はらんらんとしてくる。


「ど、どうしたの……」


「殺人鬼が現れる条件が揃っちゃったのよ!」


「え?」


「まずはじめは≪カップル≫。そして、≪他には誰もいない≫。そして頭痛薬、いわゆる≪ドラッグ≫と置き換えることもできるわ!」


そこまで言ったところで青太にも察しはついた。

しかし、そんなバカなと思う反面、現に殺人鬼がスクリーンから出てくるという超ド級の現象が起きているから、何が正しくて何が間違っているかなんて言えない。


「そして、ペットボトルの水は≪湖畔(こはん)≫よ!」


「ひ、飛躍(ひやく)しすぎだよ!」


「それだけじゃない。青太はわたしの胸元に水をかけちゃったでしょ……?」


「う、うん」


「その時に、わたしのおっぱい見たでしょ?」


「……は、はぁ!?」


「おっぱいっていうか谷間か。それが≪エロイチャイチャ≫に繋がったのよ。①カップル ②他には誰もいない ③ドラッグ ④湖畔(こはん) ⑤エロイチャイチャ ……この5つは発動条件なのよ」


「な、何だよそれ!!!!」




 ザ……ザ……

  ザ……  ザ……

ザ…… ザ……  ザ…… ザ……


「もう来るよ!!!!!」

青太は目じりに涙をためながら叫んだ。


…………階段から、巨漢はのっそりと現れた。

その姿は異様だった。

麻袋をかぶっているその大柄な巨体。


麻袋には左目のところだけ穴が空いており、そこからはギョロリとした目玉は素早く動く。

裸にオーバーオールを着ており、あざや傷だらけの肌が露出していた。


握っているオノには赤い血がこびりついていた。


「ヴゴオオオオオォォオォォォオ!!!!!」


地響きのように体を硬直させてしまうような叫び声だった。



ズシズシと長靴を鳴らしながら、

……近寄ってくる。



なずなは必死の形相で青太のリュックをつかんだ。

「な、何するんだ? なずな!」


「ウサ太郎、貸して!!!!!」


「え?」


なずなは青太の背負っているリュックから、うさぎのぬいぐるみを出した。

サッカーボールサイズのそのぬいぐるみをなずなはわしづかみにすると、それを殺人鬼に対して見せつけるように振った。


「オラ、殺人鬼め!!!! こっちにはウサギがいるんだよ!!! 耳たぶ(かじ)られたいのかよ!!!」


すると、殺人鬼はぶるんと大きな身震いをしたかと思うと、

その場に立ち止まった。



「頭痛薬やペットボトルの水なんかで条件が満たされるくらいなら、そ、それなら……これだって効果的なはずよ!!!!!」


「ヴオオオオオオォォオォ…………ッッッ!!!!!」


殺人鬼は明らかに苦しみだした。

空中をひっかくような動作し、もがいていた。


「こ、この野郎!!!」


なずなはウサギのぬいぐるみを投げた。

そしてそれは殺人鬼にぶち当たる。


すると殺人鬼が「グァアアアアアアアアアア!!!!!」と叫んで、

その場に倒れ込むと、

ビクンビクンと体を伸ばしたり縮めたりして苦しんだ。


そして、殺人鬼の体から煙が上がったかと思うと、

殺人鬼の体は蒸発していくように消えていく。


ガチャン!!!


とその時、ガラス戸の扉が開く音がした。


「!」


青太となずなは目を見合わせる。

そしてガラス戸が開くのを確認してバッと飛び出した。


外に出ることが出来た!


旧図書館の日陰から抜け出し、停めていた自転車に飛び乗った。

太陽が降り注ぐ路面に出ても二人は必死で自転車を走らせた。



その日、青太となずなは九尾(くび)市役所に電話し、

「旧図書館で行われた映画上映についてなんですが……」

と問い合わせたところ、

「旧図書館は取り壊し予定なのでイベントは行っていません」と回答された。



なずなは……苦笑する。

青太は絶句していた。



後日、旧図書館の4階の窓辺に鉄仮面をしている誰かがいる。

という噂が一部で流れるのだが、その噂は青太にもなずなにも届かない噂でとどまる……。



episode1終了しました。鉄仮面……つまり、それって『血みどろの湖畔part2』の殺人鬼ってことですよね……??いつか、二人の前に鉄仮面は現れるのでしょか??

面白いと思っていただけた方や、episode2も読みたいと思ってくださった方は、ブックマーク、そして評価をいただけると嬉しいです。よろしくお願いします!

episode2は『呪いの人形』がテーマ予定です。

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