9、旅の理由
「ああーもうめんどくさい!」
急に叫んだからか周りにいた人達が一斉に静まり私を見た。
「私の行く道は自分で決める!私はまだ旅に出ていたいの!さっきから何?黙って聞いてれば!はあ?嫌ですけど番とか!馬鹿なの?まずてめえは結局誰なんだよ!どんな奴かも分からない人と一生一緒とかまじ勘弁!消えて!後ウルフも絶対に許さないからな!いい加減にしろよ本当どこまで行ってたの?お前も馬鹿なの?はあ?何で私の為にこいつと戦うの?馬鹿めが!」
ウルフもサズも驚いて開いた口が塞がらないらしい。あの腹立つ口に土でも突っ込んでやろうか!
静まり返った店内にクスクスと笑う声が聞こえた。スコープさんだあの人は笑っていて横のクインさんは、ああ笑っているわ。
「とにかく私は旅に出るから。番にはならないしさよなら!」
「えぇ僕ふられたのぉ?残念だなぁ。次を探すかぁ。」
「リン待って!」
後ろの人達を置き去りにして私は歩き始めた。本当にめんどくさい!なんだったんだもう!
「ねえクインやっぱり正解だったでしょう?」
「なんの事?」
「リンだよ。彼女はウルフにピッタリだ。あの子ならきっとウルフに変化をもたらしてくれる。」
「そうね、でもまだ子供よ私達で支えてあげましょう。」
「そうだね。次は砂の国だ用心しないと。」
「そうね。」
「だからさ……。」
「だめよそんなの。楽しそうだけど。」
「じゃあ決まり!さあ行こうか!リコ。」
「はいはい。」
「リン!リン待ってくれ!」
ウルフを無視して歩く。砂の国はもう近いし夜も明けてきて周りも明るいし何より今ウルフの顔を見たら殴ってしまう。
「待ってくれ!悪かったリンを危険な目にあわせて本当にすまない。俺が全て悪いんだ。」
「うるさいわね!別にウルフが全て悪いわけじゃないわよ、だから許す。でもテントに知らない男が居た恐怖は当分消えないわね!」
「ああ、すまない。」
ウルフは何故私と旅をしているんだろう。きっと戦えない私は足でまといのはずなのに、何故今もこうして謝ってまでついて来るのだろう?
「妹が結婚したんだ。めでたいだろう。」
「えっ?」
話の脈絡が無さすぎて足を止め振り返る。そう言うウルフの表情は全く嬉しそうに見えない。
「もしかしてウルフ。」
「やめてくれ、言わないでくれその通りだよ。きっとリンの考えている通りだ。だから俺は村を追い出された。俺が旅に出ている理由はねその妹の事だ。」
私の考えている通り、ウルフは妹を女性として愛しているという事か。そして旅の理由はその妹。
「俺と妹は村を治める一族なんだ。それなのに俺達は……愛し合っていた。それが村中に知れ渡ってすぐの事だった。あいつの髪が真っ白になったんだよ。村中の奴らは呪いだと言い始めて呪いを受けた妹は許され、そのまま村を治める一族として生きる。俺は村から追い出すという罰になった。妹は勿論呪いが罰だと言う事だ。俺はその呪いを治してやりたいんだ!だからお前のなんでも治しが喉から手が出る程欲しいんだよ!」
やっと分かった。私に気を遣い守り続けてまで旅を続ける理由が。
「そう、分かった。私はなんでも治しを作りたい。あんたはその薬が欲しい。いいじゃない旅を続けましょう。絶対に見つけるわよ。」
私達はろくに休まず砂の国へと急いだ。