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7、サズ


「はい、はい。……はい、聞いています。分かりました失礼します。」


砂の国への途中、誰かとの通信を終えた時から明らかに様子がおかしくなった。魂が抜けてしまったような、何をしてても失敗するし、話しかけても気のない返事だし。

どうしたものかと思っていたら、キャンプをしていた時とうとう料理の途中ナイフで怪我をしてしまった。刀の扱い方に長けているあのウルフが。


「ねえ大丈夫?」


「大丈夫だ傷は深くない。」


笑いながら指を見せる。何だか無理した笑顔だ。


「そっちじゃない。最近様子がおかしいから。」


「……大丈夫だ。お前の警護は疎かにしないよ。」


目を逸らして俯く。何だかその態度に腹が立った。


「そうじゃなくて!相棒じゃない!心配なのよ!何かあったんでしょ?」


「お前には関係ない!」


と怒鳴って森に入って行ってしまった。今日のキャンプ地は深い森で入ってから1度も人には会わないような誰も寄り付かない場所だ。ウルフはそんな森の奥に行ってしまった。


「もうどうでもいい!知らない!」


私は追いかけようか悩んだけどさっきの言い草に怒りがぶり返しテントでふて寝を始めた。



「あぁー目を覚ましたぁ。ねぇーえ、こんな所で何してるのぉ?」


目を開くとテントに知らない男が入って来ていた。茶色の髪に口から牙が出ている長身の男。牙?猪の様な牙だ。もしかして魔物?

催涙の薬の瓶は男の背後にある袋の中だし。私はそれ以外戦う術はないし。とにかく逃げるしかない。


「あなた誰ですか?いきなり女性のテントに入ってくるなんて失礼でしょ。」


「あーそうなのー?ごめーん。僕人間の事は分かんなーい。ねえそんな事より遊ぼうよー。人間見るの初めてなんだー。人間は何して遊ぶの?」


遊ぶ?外は真っ暗じゃない。全く話についていけない。


「いや、明日も早いんで眠らないと。」


「なぁに?僕の言う事聞けないの?」


ひっ。顔は笑っているけど目が笑ってない。ウルフはまだ帰って来ないの?あいつー!


「なぁにキョロキョロしちゃってぇ。もしかして誰かと一緒なのぉ?」


「いいえ1人です!」


しまった!怒りに任せて変な嘘を。


「良かったぁ。じゃあ行こっか?」


そして私は変身した彼の背に乗せられ森の奥に連れて行かれてしまった。彼はやはり猪で足が早く振り落とされないようにするだけで必死だった。


「やっと止まった。」


彼が足を止めまた人間姿に変身した。今度は牙は出ていなかった。この人魔法が苦手なのかな?


「じゃなくてここどこ?」


「ここはルーバーの村だよ。魔物だけの村。」


とびっきりの笑顔で彼が言う。割と栄えている村のようだ。食べ物の屋台が出ていたり普通の民家もたくさん並んでいる。


「さあ何か食べる?それとも遊ぶ?ああ僕はサズだよ。」


「私はリン。とりあえず元の場所に帰して。」


「リン。可愛い名前だねぇ。じゃあご飯食べに行こ!」


こいつ都合の悪い事には耳に蓋をするようだ。袋もないしお金も地図もない。とりあえずサズの言うことを聞くしかないようだ。重い足取りで後を付いて歩く。


「サズ様!今日は肉串がオススメです!」


「キャーサズ様よ!いつ見ても本当に素敵ね!」


普通に歩いているだけで色んな人に話しかけられて、キャーキャー言われて何者だろうサズは。

そしてサズが足を止めたのはいかにも高級料理店といった外装の店の前だった。嘘でしょここに入るの?


「サズ様!今日は何を召し上がりますか?」


「うーん、今日はお客様と一緒だからぁ。とりあえず魚のコースを。」


「かしこまりました。」


きちっとした格好の男性がオーダーを取りに来てくれたけど名札が支配人だった。本当に何者?


「サズって何者なの?」


「何者ってぇ。うーん首領?この村を支配してる的なぁ?」


「えー!そうなの、ですか?」


「いいよぉ、急に畏まらなくて大丈夫。魔族はねどこでも1番強い奴がトップに立つんだ。だからこの村で1番つよーい僕がここで1番偉いんだって!」


「へぇそうなんだぁ。凄いね。」


「うん。どう好きになりそう?」


「はあ?」


何を言ってるの?


「わあ怖い顔。僕、番を探しててなかなか見つからないって時にリンを見てぇ。ビビッと来たんだ!」


とても爽やかな笑顔でとんでもなく怖い事を言い出した。


「えっ。」


「だから連れてきたのぉ。逃げられないようにぃ僕えらーい。」


絶句する。全て全てウルフのせいだ。絶対にウルフが悪い。そうだ次に会ったら、次会えたら殴ってやろう。



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