4、ワイト
「さあワイトへ出発しましょうか。」
「分かった。俺はすぐに出られるよ。」
「じゃあもう出ましょう。早い方がいいし。」
宿屋のおじさんにはお金を払っているしまだ暗いけどワイトを目指そう。ワイトは凄く近いし多分今出たら昼には着くわね。
「死は救済だ!病気の者は神のみもとへ逝くがよい!」
「スライ様!」
「救済だー!」
「スライ様素敵!」
「何事?これは?」
「さあ?」
ワイトは入るなりパレードを行っていて人々は皆熱狂してスライという男を讃えていた。しかもこのスローガン。
「リン、この熱気だ。あまり大きな声で批判するような事は言わない方がいい。」
ウルフは真面目な顔でフードを被った。あまり目立たないようにという合図だろう。私も頷きフードを被る。
「とにかく宿屋を探して部屋をとろう。」
ウルフが人混みから庇うように前を歩いてくれる。この人は若いけどれっきとした騎士だ。はぐれないようにピッタリとついて歩いた。宿屋はやはり村の入口にあってすぐに着いた。
「おじさん1部屋お願いします。」
「ふむ、君達夫婦かい?ここはワイト宗教国家だ。夫婦以外の男女同室は禁止されている。」
「婚約者は駄目ですか?結婚はしていませんが婚約はしています!」
ウルフは目を見開いて私を見た。ローブのフードを被っているのでおじさんには見えない。私はウルフにウィンクをした。どうせ一泊だし2部屋は本当に高い。有り得ない位高い。もし断られたら野宿する。
「婚約者か、それなら良いだろう。」
「はい、ありがとうございます。行こうウルフ!」
「あ、ああ。」
ウルフは戸惑いながら後をついてくる。部屋に入ると小声で話し始めた。
「リンは嘘をつくのが得意だな。瞬時に返すとはおじさんも信じるしかないよ。」
「良いのよ誰も傷付けない嘘はついていいの。さあ行きましょう。まずは薬屋ね。教会があれならなんでも治しなんてあるはずがない。」
「ああ、そうだな。そういえば薬屋は2件隣だよ。」
「良いわね背が高いと色んな事が見えて便利ね。」
「ありがとう、褒めてくれたと思っておくよ。」
「さあ早く行きましょう。できる事ならここから早く別の場所に行きたい。」
「それには賛成だ。」
「なんでも治し?そんな物こんな小さな薬屋にある訳ねえだろうが。」
態度わる。これだから田舎はってうちも田舎だわ。
「そうですか。ではありそうな場所はご存知ではないですか?」
「はっあるとすりゃああの教会だろうよ!」
「あのパレードの?」
「ああ、そうだ。旅人から見れば異様だろう?正直俺も信じていないよ。大きな声では言えないがあそこの教会は病気を撒いているんだ。」
「病気を撒く?」
急に何を言い出したの?お兄さんは少し小声で言い直した。
「ああ、皆の心に病気を撒いているんだ。だからあんたも教会に行くなら気を付けな。あそこはもう神聖な教会じゃない魔窟だよ。」
「分かりました。ありがとうございます。」
何だか急にあの教会が怖くなってきた。でも行くしかない今はパレードが終わって道に人も居ないし異様に静かで気味が悪いけど行くしかない。教会へ行って誰か代表に会う約束位はできるだろう。
「リン大丈夫か?」
「だだだ大丈夫よ。でも何かあったらすぐに転移しましょう。」
私はウルフのピアスを見た。私もクインに転移ができる魔法石が付いたペンダントをもらっている。私は家にウルフは魔王城に転移できるはずだ。
「私が赤い屋根と言ったら合図よ。すかさず転移してね。」
「分かった。」
ウルフと私は緊張した面持ちで教会のドアを叩いた。