14、しあわせ
「サラ。久しぶり。」
「兄様!兄様も私の結婚式に?」
「いや、俺はこれを。」
そう言って瓶を渡す。久しぶりに見たサラはとても元気で幸せそうだ。ウェディングドレスがとても似合っている。
「これは?」
「なんでも治しだ。世界一の魔法使いと世界一の薬師が作った。効果は保証する。だからこれで呪いを。」
そう言った所でサラは瓶を俺に握らせた。その上から手を包んでくれる。温かい。
「そうですか。ありがとうございます。その気持ちだけを受け取ります。」
「サラ何故だ!どうして!その白い髪のせいでずっと辛い思いを!」
「兄様、幸せなんです。充分に幸せなんです。だからこのままで大丈夫。私が1番辛いのはこの髪の事をずっと嘆き続けている兄様の事。」
「俺?」
「ええ、私と兄様はもう自由です。私は村で兄様は城で生きている。自由に生きて行く。それなのに兄様だけが私の髪の事に縛られている。それが辛い。」
「そうか、すまない。」
「ふふっそれにこの髪、割と気に入っているんです。だって。ふふ。」
「だってなんだ?」
「兄様の狼の毛と一緒ですもの。綺麗な色だわ。」
サラは優しく花のような笑顔で笑った。なんだかその笑顔に泣きそうになって涙を堪える。
「そうか。サラ俺は行くよ。幸せになるんだぞ。」
「ええ、さようなら兄様。」
俺は変わらず魔王城で騎士をしている。まだまだ勉強する事が多くて大変だ。魔王様とクイン様は旅が楽しかったのか城をあける事が多くなった。
リンは本当にサズと番になってサズの村で薬師をしている。とても幸せそうだ。
結局、世界を見ることもなんでも治しで妹を治すことも出来なかったけどこれで良かったと思う。きっと髪の呪いにかかっていたのは俺だったんだろう。妹は髪しか見なくなった俺をいつも慰めてくれていたし。
もし叶うならまた旅に出よう。目的もない気ままな旅に。