11、作戦開始
「本当にもう!リンを守るのは君の仕事だろう!旅が終わったらシュラにしごいてもらうからね!」
魔王様が笑顔で言う。笑ってはいるが結構怒っている気がする。そりゃそうか1度ならず2度までも。騎士失格だ。
結局、俺は研究所に捕まっていたらしく、クイン様が研究所ごと睡眠の魔法をかけてくれたらしい。3日間は眠ったままらしいので3日後迄に全て終わらせないと俺が逃げたことがバレてしまう。兵士も研究所にたくさんいたのでこれが覚醒してしまうと確かに面倒だ。
「はい、そこまで。怒るのも落ち込むのも後。まずはリンを奪還するわよ。今回は武力で押し通る事はできない。私達は3人共魔族だから。魔族と人間は不可侵を結んでいる。どうにか作戦を考えないと。」
魔王様はクイン様が魔族と言った所でにんまりと笑った。人間ではなくもう魔族だと思っている所が嬉しいらしい。そんな場合ではないと思うが。その後キリッとした表情で魔王様が口を開いた。
「となると。」
「駄目よ!それは駄目。」
「そうも言ってられないよ。リンは僕達4人のせいで捕らえられたんだから。」
「でも、あの2人は。」
「呼ぶよ。」
クイン様が何か言う前にリンの両親が現れた。何が起こったのか分からない顔をしている。それはそうだろう何も連絡なく転移させられたのだから。2人共白衣を着ているそういえば2人共が薬師なんだとリンが言っていたな。
母親の方はすぐに何かを察知して話し始めた。
「ここは砂の国ね。という事はリンに何かあったのね。」
「さすがだね、姫様。」
「とにかく話して。」
魔王様とクイン様は砂の国に着いてからの経緯を全て話し始めた。どこかで見ていたのか話の内容も事細かで俺も知らないリンの現在の状況ですら情報を握っていた。
「分かったわ。もう腹を括るしかないのね。もう一生この地を踏むことはないと思っていたのに。」
「大丈夫、2人には城内の通路や目立たない場所を教えてほしいの。動くのは私達3人でするわ。」
「クイン、私も行くわ!あの子が!」
必死にクイン様におい縋っている。クイン様は優しく母親を抱きしめた。父親の方も不安そうにあたふたとしてその様子を眺めている。
「大丈夫!絶対に助けるわ!あいつらはいつまで経っても!」
クイン様の目が血走っている。相当頭に来ているようだ。そういえば以前からクイン様は砂の国を憎んでいるような事を言葉の端々に滲ませていた。
「最悪城内の生物を全て潰すわ。もう2度と口も聞けない体にしてやる。」
クイン様が低い声で言う。魔王城でのニコニコとされているクイン様はたった今死んだようだ。
「クインその考えはやめなさい。」
「いいのよ。悪い人は滅べばいいの。」
クイン様はまだブツブツと怖い事ばかり並べている。リンの両親は早速城内の地図を書いているようだ。
「魔王様、何故クイン様と結婚なされたんですか?」
「ふふふ。かっこいいからだよ。それにクインのいい所は僕だけが知っていればいいんだ。」
魔王様をまた怒らせてしまったようだ。今度こそ全く笑っていない。
「すみませんでした。リン奪還死んでも遂行させます。」
「ああ、よろしくね。」
「書けたわ!20年前の記憶だけどしっかり残っていた。多分大丈夫だと思う!」
確かに白紙から書き上げたとは思えない程綺麗な地図にびっしりと情報が書き込まれている。その間に2人は変身しまた老人と子供になっていた。どうやらこの2人はあの姿を砂の国の人に知られているようだ。
「ありがとう。じゃあ行くわよ。とにかく目立たないようにリンを地下の檻から救出する作戦、開始よ!」
長い作戦名だ。どことなく不安を抱えたまま城に繋がる水路から城内に侵入した。