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再び女の子を描いてみよう

「……」


 テーブルを囲んで家族がそろっている。

 父、母、妹、それぞれ僕を見ている。


角男(かくお)、隣に住む加恋(かれん)ちゃんを襲ったのは本当?」


 ニコニコした笑顔のまま、母が口を開いた。

 今までの経験からすると、とても怒っている時の表情だ。


「襲ったわけじゃなく、脱がそうとしただけなんだ」

「お小遣い1か月停止」

「そんな殺生な!? 下着すら見えない未遂だったんだよ!?」

「2か月」

「ごめんなさい、もう反論しないので許してください」


 これから女体のアレコレを調べる必要があるのに、これでは資料すら買えなくなってしまう。


「まあ、加恋ちゃんが娘になってくれるなら、お父さんはうれしいけど」

「あなたは黙ってて?」

「あ、はい」


 縮こまる父。

 この家では男子の地位が低い。

 母は絶対である。


「おい、クソ野郎。あたしのプリンちゃんと買っとけよ」

「お兄ちゃんとは呼んでくれないのか?」

「あ?」

「すみません、早急に買い直しておきます」

「迷惑料込みで5つ」

「え? いくらなんでもボッタクリすぎでは……」

「3か月」

「おおせのままに!」


 僕の小遣いが全部消えることとなった。




「よう、角男!」


 学校で親友と会う。


「どうした? 浮かない顔して」

「……実は、小遣い減らされることになって」

「何があったんだ? ついに亜希(あき)ちゃんに手を出したのか?」

「加恋を脱がそうとしただけで家族会議だよ。勝手にプリン使ったら妹も激怒するし」

「冗談で言ったつもりなのにマジでやったんかよ!」

「え?」


 絵師としてのアドバイスじゃなかったの?


「それで、どうだったんだ? す、すごかったのか!?」

「ああ、すごく大変だったよ。全部違うプリンがいいとか言って、店をはしごすることになったし」

「そこはどうでもいいって! 町田(まちだ)さんのことについてだよ!」

「加恋のこと? 別に抵抗する加恋の服を、こうやって……」


 キーンコーンカーンコーン。


「おっと、授業が始まってしまう。急ごう」

「おい! そこは言ってけよ! 授業が身に入んなくなっちまうよ!」


 授業はちゃんと受けないといけない。

 小遣いのことは忘れて、一日しっかりと勉学に励んだ。




 テロリンテロリンランテンリンロンテーレーローリーロー。


 家に帰ってきて、パソコンの電源をつける。


「……」


 何を描けばいいんだろう。

 あれから加恋と話をしようと思ったけど、目も合わせてくれない。

 裸になるのが嫌なら、別にスク水とかでもよかったのに。

 また部屋に連れ込むと怒られそうだし、しばらくは誘わないほうがいいかもしれない。

 そうなると……。


「これかな」


 本棚にある本を手に取る。

 各種資料を参考にするしかない。

 理想の彼女を描くために、まずはじっくりと読むことから始めよう。


『おい変態、飯』


 妹が呼びに来る。

 まだまだ時間はある。

 ご飯やお風呂を済ませてから、じっくりと描き上げよう。




 チュンチュン。


「?」


 カーテンから差し込む光。

 時計を見る。


「……しまった」


 徹夜してしまった。

 途中でうっかり200巻近くあるハードボイルドマンガに手を伸ばしてしまった。

 今から寝たら遅刻確実だし、顔でも洗って目を覚ましてこよう。




「よし、描くぞ」


 家に帰ってきて、パソコンの前に座る。

 昨日は描けなかったので、今日は描かないと。


「……」


 目がしぱしぱする。

 授業はしっかり受けてきたので、一睡もしていない。

 おかげで、とても眠い。

 こんな状態ではまともに描けないし、少し仮眠を取ろう。

 少しだけなら大丈夫。

 少しだけなら……。



 

 チュンチュン。


「?」


 カーテンから差し込む光。

 時計を見る。


「……しまった」


 仮眠のつもりが、熟睡になってしまった。

 さわやかな目覚め。

 眠ってしまったのは仕方がないので、学校へ行こう。




「今日こそは!」


 睡眠は十分取れているので、目がしぱしぱすることもない。

 今日はいける。


「あれ?」


 パソコンの画面が青くなる。

 なんだろう?

 何か英語が書いてある。


「?」


 もちろん、英語なので意味がわからない。

 キーボードを連打したり、マウスをカチカチしても、何の反応もなかった。

 しばらく放置してみても、画面が切り替わらない。

 このままでは絵が描けないので、親友と連絡を取る。


「助けてくれ、何もしてないのにパソコンがぶっ壊れた」

『絶対何かしてるヤツじゃん』

「パソコンの電源を入れただけで青い画面が出てきたんだよ!」

『なんか書いてある?』

「えーと……英語がいっぱい」

『だろうな』

「無理だよ、日本人にはこんな呪文読めないよ」

『おい、現役学生』

「もうZカップの彼女と会えないんですか!?」

『よくあることだから落ち着け。まずは再起動しろ』

「電源切っちゃっても大丈夫? データとか消えない?」

『そりゃ症状次第だけど、消えたらマズいデータでもあるのか?』

「日夜集めているお宝画像や動画集が……」

『それが原因じゃね?』


 再起動しても青い画面は直らず。

 直接親友を召喚することに。

 原因を特定するためにセーフモードで起動したり、パソコン本体をいじったり。

 結局、この日はパソコンを直すだけで一日が終わった。




「やっと描ける!」


 描きたい気持ちはあるのに、描けない日々が続いていた。

 モチベーションが高まりまくっている。

 今なら、理想のZカップが描けそうな気がする。

 今日こそ、口には出せないあんなことや、こんなことを……ぐへへ。




「……」


挿絵(By みてみん)


 また出会ってしまった。

 そうだった。

 いくらやる気があっても、絵の実力は変わっていなかった。

 これを保存するわけにはいかないので、また新しく描き始める。

 何度も試行錯誤を繰り返していけば、理想に近づいていくはず。

 ひたすら描き続ける。




「……」


挿絵(By みてみん)


 ダメだ。

 何度描いても、この結末から逃げられない。

 どれだけがんばっても、下手くそには未来がないのだろうか。


「……」


 いや、描き上がる時間は早くなったし、少しは成長しているはず。

 表面的にはわかりづらいだけで、内部は進化しているかも?


「……」


 保存ボタンに手を伸ばす。

 あの時とは違う。

 パンティーだって上手く描けてたし、これだって前よりはイケテルはず。

 だから、あの時のような悲劇は起きないはずだ。

 自分を信じてボタンを押す。


 ドスッ。


 画面から謎の物体が落ちてくる。

 ここまでは想定の範囲内。

 まだあわてるような時間じゃない。


 ギギギギギ……。


 ビクビク動きながら、ディスプレイからはい出てくる。

 一度見て慣れているので、前ほどの恐怖はない。

 じっくりとその動きを観察する。


「……」


 前と比べると、動きが滑らかになっているような……?

 変なうめき声も聞こえてこない。

 内面的には進化しているのかも。


「や、やぁ」


 意思疎通を図ってみる。


 ギギギギギ……。


 さすがに無理だったか?

 顔の造形をはっきりさせないと、うまく話せないのかもしれない。

 あとは……。


「……」


 そっと手を伸ばす。

 一番重要なのは、やはり触り心地。

 大きくてもカチカチだったら困ってしまう。

 手のひらに吸いつくようなもちもち感。

 それと、はりのある弾力感

 そこがしっかり再現できているかどうか……。


 ガシッ!


「!?」


 腕をつかまれた。

 本体の中心から、触手のようなモノが伸びている。

 さらにもう1本の触手が伸びてきて、交互に腕をはい上がってくる。


「ひ、ひぃっ!」


 思っていたより力強い。

 はがそうとしているうちに、肩まで上がってきた。

 本体の部分も、ずるずるとせり上がってくる。


 がぱぁ。


 本体の中心が割れて、左右に大きく伸びる。

 大量の触手らしきモノをうねうねさせながら、僕の顔に近づいて……。


『ヴォォォォォォ!』


「イヤァアアアアア!?」

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